入社して1ヶ月。聞いていた仕事と、いま毎日やっている仕事が少しずつ違う。

まったく別の仕事というわけでもない。嘘をつかれたわけでもない。だから「何が違うの」と聞かれてもうまく説明できません。もやもやだけが残ります。

私は求人票を作る側の人事と、候補者に紹介するエージェントの両方をやってきました。エージェント時代、入口で良く見せた求人が早期離職につながるのを内側から見ています。あれはしんどい。

求人票に書いてあること自体は嘘ではない。それでも、読んだ人が受け取る印象と実際の仕事はずれます。誰も嘘をついていないのにズレるという構造が、採用にはあります。

入社後のズレでも、たどると入社前に着きます。

だいたいそうです。

この記事では、そのズレがどこで作られて、どこまでなら選考中に潰せるのかを分けて書きます。求人を出す側と、それを紹介する側の両方から見えたものを並べます。

ズレは、求人が作られる時点で入っている

順番に見ます。

採用の話が社内で始まるとき、最初から「この仕事を担当して、こういう経験が必要な人を採りたい」と決まっていることは多くありません。人が足りない。経験者がほしい。若手を採りたい。だいたいこのへんから始まります。

求人は、経営や現場から人事に注文が来て作ります。人事がそこから、どんな仕事を任せるのか何が必要なのかまで整理して文章にする。

整理をサボると、どうなるか。

「主体性のある方」「コミュニケーション能力が高い方」のような、意味の広い言葉が並びます。

見覚え、ありませんか。

読む側からすると、この手の求人は情報がないのと同じです。何を任されるのかが書いていないので、自分の経験が使えるのかも判断できない。それでも応募はできてしまうので、答え合わせは面接まで持ち越しになります(求人票の作られ方そのものはこの記事に工程で書きました)。

給与の幅が広い求人にも、採りたい人物像が固まっていない場合があります。経験や役割で給与を変えるつもりでも、どこまでの経験を求めるかが決まっていなければ書ける仕事内容も曖昧になる。

「未経験歓迎」や「急募」にも、それぞれ理由があります。ただ書かれた言葉だけでは背景まで分かりません。

聞くしかない。

聞けば、たいてい返ってきます。

求人票は広告でもあるので、会社として魅力的に見える内容を選んで書きます。私も書くときはそうしていました。ただ給与の内訳や労働時間、休日は書き方が決まっていて、好きなように良く見せることはできません。

盛れる欄と盛れない欄がある。

ここ、大事です。

盛れない欄に書かれた数字と、面接で聞いた話。この2つを並べたときに差が出たら、そこがその会社の見せ方の癖です。仕事内容の描写がどれだけ魅力的でも、休日や労働時間の欄と食い違っていれば、私なら後者を信じます。

数字は嘘をつきにくい。

そして、任せる仕事が固まらないまま募集が始まると、入社後に担当が変わります。求人を見た時点では同じ仕事に見えても、社内で何を任せるかが決まっていなければ実際の仕事まで同じとは限らない。

ここが最大のズレの元です。

募集が始まった時点で任せる仕事が決まっていない会社は、入社した人に対して後から役割を当てはめることになるので、本人からすると「聞いていた仕事と違う」が起きます。悪意があるわけではなく、社内の準備が間に合っていないだけということも多いです。

ズレが出るのは、だいたい同じ3か所

入社前に想像していた1日と、実際の1日を並べてみてください。仕事の名前は同じなのに時間の使い方が違う。ミスマッチの正体は、たいていこれです。

3か所あります。

ズレが出やすい3か所と、選考中に見るところ

ズレる場所 仕事の中身と時間の配分 誰と働くか・どこまで決められる 評価のされ方と給与の上がり方 選考中に見ておくところ 仕事内容が動詞まで書いてあるか。1日の流れを聞く 現場の人に会えたか。決裁の範囲を聞く 昇給の仕組みと、直近で上がった人の例を聞く

まず、仕事の中身と時間の配分。

求人票に「営業」「企画」「人事」と名前だけ書かれていても何をするのかは読み取れません。「顧客に提案する」「社内の関係者と調整する」のように動詞まで書いてあれば、自分の想像とのズレを先に見つけられます。

次に、誰と働くのか。どこまで自分で決められるのか。現場の人に一度も会わないまま選考が進めば、ここを知らないまま決めることになります。役割は同じでも、決裁を自分で持てる会社と、一つひとつ上に確認してから動く会社では、日々の仕事の感触がまるで違います。ここは求人票に書かれないので、会って聞くしかありません。

ここは面接で。

最後に、評価と給与。

求人のレンジの上限は、条件を満たせば理論上あり得る数字として置かれていることが多いです。実際の提示は下限寄りになる場合がある。上限を自分の出発点だと思って読むと、あとで話が違うと感じます。

給与の読み方は求人の読み方の記事に細かく書きました。

評価のされ方は、さらに見えません。何をすると評価されるのか。どう上がるのか。求人票に書いてあることはほとんどないので、聞かないと分かりません。しかもここは、入社してから効いてきます。仕事の中身が想像どおりでも、評価の基準が自分の得意な進め方と噛み合っていなければ、頑張っているのに評価されないという形でズレが出ます。オファー面談まで来たら、昇給の仕組みと、直近で上がった人がどんな働き方をしていたのかは聞いておいて損がないです。

遠慮はいりません。

入口で潰せるズレの多くは、求人票のどこを読んだかで決まります。応募前に見ておく欄は求人票チェックリストにまとめました。

選考中に潰せるズレと、潰せないズレ

ここからが本題です。

面接で聞きたいことがある。でも条件ばかり気にする人だと思われないか、選考に響かないかと考えて飲み込む。

これ、本当にもったいない。

求人票の給与の内訳や労働時間、休日と面接での説明が食い違っていたら、その場で確認して構いません。「急募」の理由を聞くのも失礼にはあたらない。前の担当者がなぜ抜けたのかも、これから担当する仕事を知るために必要なら聞いていいです。

私は面接する側にいましたが、確認の質問が来たこと自体で評価を下げたことはありません。むしろ曖昧なまま進めたほうが、後で困ります。入社してから話が違うとなれば、採用した側も痛手を負うからです。エージェントが間に入っているなら、直接は聞きにくいことを確認してもらう方法もあります。面接で言い出せなかった内容でも間に立ってもらえます。

内定が出た後にも機会はあります。オファー面談は、承諾する前に条件と仕事の中身をまとめて確認できる最後の場です(何を聞くかはこの記事に並べました)。

とはいえ、全部は無理です。

社内の空気が自分に合うか。一緒に働く人と相性がいいか。ここは入ってみないと分かりません。だからこそ、確認できる条件と仕事内容だけは曖昧にしない。潰せるところを潰しておくと、残る不安の量が変わります。

潰せない分は諦める。

入ってからズレに気づいたとき

最後にひとつ。

入社して数ヶ月。辞めたい気持ちが出てきて、でもここで辞めたらまた同じことになるのではと考えて動けない。しんどいですよね。

採用側の合否会議では、活躍と定着が議論になります。人事はリスクを嫌うので、短期間で辞めた経験があると次の選考で理由を詳しく聞かれやすい。ここは隠さずに書きます。

ただ、見られているのは回数ではありません。なぜその仕事を選んできたのか。これから何をしたいのか。会社選びで大事にしていることが一貫しているか。説明できるかどうかで見え方は変わります(転職回数の記事に採用側の読み方を書きました)。

それと、最初の数ヶ月は受け入れ側もこちらの立ち上がりを見ている時期にあたるので、まだ評価が固まっていないことがほとんどです。思っていたより難しいのか。聞いていた仕事と実際が違うのか。この2つは分けたほうがいい。

決める前に、もう一段。

紙とペンで足ります。

今のズレは会社の問題なのか。その職種自体が合っていないのか。会社が変われば解決するのか、仕事そのものを変えるのか。ここで次に選ぶ求人が変わります。

別物です。

入口で盛られていたなら、それは会社側の作り方の問題です。選んだ自分の見る目だけの話ではない。

ただ急いで結論を出す必要もないんです。どこが想定と違ったのかを書き出してから、次を考えてください。

入社前に「思っていたのと違う」の芽を拾う手段としては、退職者の口コミがいちばん具体的です。退職理由の欄を読んでから決めても遅くありません。

次の工程 → 良い企業の見極め方(全体) / 面接で会社を見る / 試用期間で切られる理由