求人を並べて見比べても、どれも悪くはなさそうで決め手がない。会社名を打ち込んで評判を探しているうちに時間だけが過ぎて、その日は応募先を決められなかった。この話、相談を受ける側で何度も聞きました。
私は求人票を作る側にいた人間です。あの文章が会社をよく見せるために書かれていることは知っています。だからそこだけ見て「自分に合うか」を決めるのは、正直かなり難しい。
採用側で合否を話し合うとき、最後まで議論になるのは2点だけです。入社後に活躍するか。長く続くか。
この2つ、応募する側から会社に向けても同じ形で使えるんです。裏返すだけです。「いい会社かどうか」ではなく「自分がここで活躍できて、続けられるか」。問いを置き換えると、見る場所が決まります。
会社を見る材料は、4つしかない
応募先を決める前に手元の材料を数えると、思ったより多くありません。求人の文面。面接で会った人。ネットの評判。エージェントから聞く話。だいたいこの4つです。
求人票は広告です。
とはいえ給与の内訳や労働時間、休日は書き方が決まっていて自由に盛れません。給与の幅がかなり広ければ社内で採りたい人物像がまだ固まっていない場合がありますし、「未経験歓迎」や「急募」にもそれぞれ社内の事情があります。欄ごとの読み分けは求人の読み方の記事に細かく書きました。
面接で見られているのは候補者です。でも会社の状態もそこに出ます。
誰が出てくるのか。何を説明されるのか。聞いていると求人票では分からなかったことが見えてきます。
エージェントから聞く話には、求人票にない情報があります。会社と直接やり取りしているので、採用の背景や選考の進み方まで知っていることも多い。ただ決定人数や売上という目標が向こうにもあるので、話の重心が応募を進める方向に寄ることはあります。悪意ではなく、そういう構造で動いている仕事だという話です(この構造はエージェントの仕組みの記事に書きました)。
ネットの評判も同じです。
わざわざ書く人には、動機がある。
4つの材料。分かることと、分からないこと
どれも一長一短。
求人票では「未経験歓迎」だったのに、面接では経験をやたら細かく確認された。そういう食い違いが出たらそこを次の面接で聞く。4つを突き合わせて、ずれた場所だけ拾っていく。実務的にはこれが一番効きます。
活躍できるかは、自分の勝ち方が通じるかで見る
これまでの仕事で、一番うまくいったときを思い出してみてください。何をしているときに手ごたえがありましたか。人と組んで周りを動かしたときかもしれない。こじれた話を整理して解決の方向を見つけたときかもしれません。誰も気づいていない問題を先に見つけて動き出した、というのもあると思います。ここで思い出すのは成果の大きさではなく、そのとき自分が何をしていたかのほうです。金額や件数は会社が変われば通じませんが、進め方は持っていけます。
採用側の評価シートは、だいたい3系統。
求人票の要件にスキルと経験が合うか。人となりや志向性、ストレス耐性といった人物タイプ。そしてビジネススキル。
このビジネススキルを、私は「見立てる」「仕立てる」「動かす」で見ています。課題を見つけるのが見立てる。解決策を設計するのが仕立てる。実行して周りを巻き込むのが動かす。厚生労働省が整理しているポータブルスキルにも近い考え方です(厚生労働省 ポータブルスキル見える化ツール)。
「勝ち方」を照合する順番
転職すると環境も人も進め方も変わります。採用側が過去の経験をあれだけ細かく聞いてくるのは、環境が変わっても同じように成果を出せそうかというところを見たいからです。
再現性、と言います。
これ、応募する側にも使えるんですよね。自分がどの場面で成果を出してきたかを先に決める。その力が応募先で必要とされているかを求人と面接で照らす。仕事内容が「営業を担当する」ではなく「顧客の課題を整理する」「社内を調整して進める」まで書いてあれば、照らし合わせはずっと楽になります。
書いていない会社は、そこで分かることが少ない。
続けられるかは、会社の安定より噛み合いで決まる
転職回数が多かったり、前の会社を早く辞めていたりすると、そこを突っ込まれるのが怖いですよね。またすぐ辞めると思われないだろうか、と。
採用側の合否会議では、活躍と同じ重さで定着が話題になります。
人事はリスクを嫌います。短期間での離職歴が懸念として扱われやすいのは事実です。
ただ、見ているのは回数そのものではありません。どんな仕事をしたいと考えてきたのか。何を大事にして会社を選んできたのか。その軸が転職のたびに大きく変わっていないか。
回数が多くても志向に一貫性があれば見え方は変わりますし、逆に回数が少なくても軸がその都度入れ替わっていれば、そこは聞かれます(軸の作り方はこの記事に手順で書きました)。入社してほしいからと中身を良く見せた求人が、入社後の「話が違う」を生むのも同じ構造です。
エージェント時代、入口で盛った求人が早期離職につながるのを内側から見ました。
あれはしんどい。
だから、続くかどうかを規模や安定だけで決めないほうがいいです。
自分が大事にしていることと、その会社が求めているもの。噛み合っているかのほうがよく効きます。
会社がこちらの定着をどれくらい気にしているかは、何を確認してくるかに出ます。転職理由や仕事選びの軸を何度も聞いてくるなら、長く働けるかを慎重に見ている可能性が高い。しつこいなと思う面接ほど、噛み合わせを丁寧にやっていたりします。
噛み合うかを判断する材料のうち、求人票から取れる分は決まっています。取れる欄だけを求人票チェックリストに一覧にしました。
見極めきることはできないので、確認できるところだけ確認する
面接の最後の「何か質問はありますか」。
ここです。
本当は確認したいことがあるのに、感じの悪い聞き方になりそうで言葉が出てこない。結局、当たり障りのないことを聞いて帰る。よくあります。
そこまで気を遣わなくて大丈夫です。
求人票の給与の内訳や労働時間、休日と面接での説明が食い違っていたら、その違いは確認して構いません。「未経験歓迎」「急募」の理由を聞くのも失礼にはあたらない。採用側は社内の事情を知っているので答えられる範囲で答えます。
エージェントが間に入っているなら、直接は聞きにくいことを確認してもらう手もあります。私も面接する側にいましたが、確認の質問が来たこと自体で評価を下げたことはありません。
そこで減点する会社なら、入っても聞けません。
もちろん、選考中に会社を完全に見極めることはできない。入ってから分かることは残ります。というより、けっこう残ります。それでも、自分の経験が使えそうか、大事にしていることと会社が求めるものが合っていそうか。この2つは選考の途中でもかなり確認できます。
会社の良し悪しを当てにいくと、材料が足りなくていつまでも決まりません。
噛み合うかに切り替える。
聞くことのほうが先に決まります。
候補の会社が絞れてきたら、在籍者・退職者の口コミを固有名詞で確認しておくと、面接で聞くべきことが具体的になります。
次の工程 → 面接で会社を見る / 「思っていたのと違う」が起きる会社 / 口コミサイトの読み方