内定が出て、うれしかった数日後。送られてきた条件通知書を眺めながら急に不安になってきます。この年収に残業代は入っているのか。配属はどこなのか。聞いたら図々しいと思われるんじゃないか。結局そのまま、承諾のボタンを押してしまう。
はっきり書きます。承諾前は、聞いていいことしかありません。 むしろオファーを出す側からすると、何も聞かずにあっさり承諾されるほうが、本当に納得して決めたのだろうかと不安になります。私は採用側でオファーを出し、条件通知書を作り、辞退の連絡も受けてきました。この記事は、承諾する前の数日間に何を取っておくべきかの話です。
承諾したあとは、聞ける範囲が急に狭くなる
なぜ承諾前かというと、立場が変わるからです。これが大きい。
承諾前のあなたは、まだ他社と比較している最中の候補者です。会社側には条件をきちんと説明して安心してもらう動機があります。この時期の質問は、断られないための材料として歓迎されます。
承諾後は、入社予定者になります。ここで条件の再確認を持ち出すと、社内では「聞いていた話と違うと言っている人」という扱いになるんです。同じ質問なのに空気が変わる。確認は全部この窓のうちに。承諾まで数日しかありません。
オファー面談で押さえる7つ
条件通知書に書いてあることと、書いていないことがあります。大事なのは、たいてい書いていないほうです。
承諾前に確認しておきたい7項目
この中で私が一番大事だと思うのは④です。④だけでもいい。
増員か後任か。 これを聞かれると、会社の側は採用の背景を話さざるを得なくなります。後任なら前の人がなぜ抜けたのかまで話が及ぶことがあるんです。組織の状態がいちばん透けて見える質問だと思っています。
聞かれた側として嫌な気持ちになったことは、私は一度もありません。むしろ入社前から組織の事情まで考えられる人なんだなと受け取って、こちらの期待値のほうが上がります。逆質問としても優秀なので、面接の段階で聞いてもいいくらいです(逆質問は何を聞くか)。
①も外せません。提示された年収に固定残業代が何時間分含まれているか。ここを確認しないまま入社して、月々の手取りを見た3ヶ月後に前職より実質の時給が下がっていたと気づく人が実際にいます。しんどい気づき方です。
聞き方で損をしないための、順番の話
全部聞いていいとはいえ、順番はあります。
面接の一次で待遇の話だけを並べると、たしかに仕事への関心が薄く見えます。でもオファー面談はそもそも待遇を詰めるために設けられている場なので、ここでは遠慮しなくていいんです。段階が違います。
とはいえ条件だけをいきなり並べると事務的になりすぎるので、私はこの順番を勧めています。
- 仕事の話(配属、チーム、期待される役割)
- 組織の話(募集背景、上司、体制)
- 条件の話(年収内訳、残業、働き方、入社日)
3から入っても落ちることはないです。ただ1から入ったほうが相手の口が動きます。質問の順番は、返ってくる情報の質を変えます。

口頭で聞いた話は、文面に残す
面談で聞いた話は、その場では覚えていても数週間経つと曖昧になります。しかも人事の担当者は異動します。私も引き継ぎを受けた側で「前任がそう言っていたらしい」という話を確認できず、双方が困った経験があります。
だから、面談のあとにメールを1通送っておく。形式ばらなくていいです。
本日はありがとうございました。伺った内容を確認させてください。配属は◯◯部の△△チーム、想定年収◯◯万円(固定残業◯時間分を含む)、入社日は◯月◯日で調整、という理解で相違ないでしょうか。
これで文面が残ります。角も立たない。確認のメールを嫌がる会社は、その時点で1つ情報を出してくれているとも言えます。
条件が合わないときは、承諾前に言う
条件通知書を見て、思っていた金額と違うことがあります。ありますよね。
このとき、承諾してから交渉に入るのはかなり不利です。順番が逆になるので。言うなら承諾前。
そして知っておいてほしいことがあります。年収交渉で内定が取り消されることは、まず無い。 分かれ目は交渉の上手さではなく、社内の決裁の枠に余裕があるかどうかです。枠が無ければ丁寧に断られるだけで、それで評価が下がったりはしません。枠の話なんです。
この構造は年収交渉の実際に詳しく書きました。
条件以外でも同じです。配属が想定と違う。入社日が早すぎる。承諾前ならまだ調整の余地があります。承諾後に言い出されると、こちらは席も機材も受け入れの段取りももう動かしてしまっているので、はるかに動かしにくくなるんです。
返事を待ってもらうのは、失礼ではありません
他社の選考が残っているのに、返事の期限が先に来る。よくあることで、焦りますよね。
「1週間以内にご返答を」と言われることが多いと思いますが、あれは法律で決まっているものではなく、単なる慣例です。会社側の都合で決めている期限なので、相談の余地があります(内定の返事の期限)。
伝え方はシンプルで足ります。他社の選考が◯日に最終なので、そこまでお時間をいただけませんか。これで通ることが多いし、採用側にいた実感として、待つこと自体は日常です。困るのは、期限が曖昧なまま連絡が途切れること。期限さえ切ってくれれば、社内の調整はできます。 他の候補者への連絡をいつ出すかもそれで決められるので、正直に日付を言ってもらえるほうがこちらとしてはずっと助かります。
承諾を急がせる会社は、その時点が情報です
最後に、会社側の振る舞いについて判断材料をひとつ。
「今日中に返事をください」と強く迫ってくる会社があります。承諾の前に他社を全部辞退させようとする会社も。これ、入社後の進め方が透けて見える瞬間だと思っています。
私が採用側にいたとき、候補者に他社の辞退を先に求めたことは一度もありません。比較したうえで選んでもらったほうが、入社後の定着がはっきり違うからです。無理に押した人は、だいたい早く辞めます。
承諾前のやりとりで見えること
右側が出たときは、慌てて押さないでください。承諾は取り消しにくい判断です。
承諾前にやることは3つだけ
長く書きましたが、やることは多くありません。3つだけ。
- オファー面談で7項目を聞く(特に④の募集背景と①の年収内訳)
- 聞いた内容をメール1通で文面にする
- 合わない点があれば、承諾前に伝える
これだけです。そのあとの数年を左右する数時間だと思えば、そんなに高い投資ではありません。
7項目を面談の場で思い出せる自信がないなら、内定・オファー確認シートを開いたまま話してください。この記事の7項目に、条件通知書で突き合わせる欄と、複数社を並べる欄を足してあります。スマホでチェックが入ります。
内定は、まだゴールではありません。ここから退職の交渉と入社が続きます。次は退職の切り出し方と入社後3ヶ月の立ち回りへ。工程の地図はこちら。