内定が出て、退職も決まった。次に来る不安は「入ってからやっていけるか」です。
特に多いのが試用期間でクビになるのではないかという恐れ。あと「即戦力として期待されているのに、何もできなかったらどうしよう」という焦りですね。
私は人事として中途入社者を受け入れる側にいました。入社手続きをし、試用期間の面談をし、現場から「あの人どうですか」の報告を受ける立場です。その視点から言うと、最初の3ヶ月で見られているのは成果ではありません。試用期間で実際に切られる人も想像されているのとは違う理由で切られます。
この記事は受け入れる側が本当は伝えたいことを書きます。
試用期間の実際。切られるのは、能力不足ではない
まず、恐れの解体から。
試用期間は多くの会社で3〜6ヶ月。法的には「解約権を留保した労働契約」であって、無条件に切れる期間ではありません。試用期間中でも本採用の拒否は解雇に準じて扱われ、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が要ります(労働契約法第16条の解雇権濫用法理/e-Gov 労働契約法)。「思ったほど仕事ができない」だけでは本採用拒否は通りません。採用側もそれを知っているので実務上まず踏み込まない。
じゃあ、何なら切られるのか。
人事として見てきた範囲ではほぼこの3つです。
- 経歴詐称。書類に書いた資格や在籍期間が事実と違った。能力じゃなくて信頼の話なので、重く扱われます。
- 勤怠。遅刻・欠勤が続く。記録に残るので、最も動かしがたい。
- 周囲との重大な軋轢。業務が回らないレベルの対人トラブル。
普通に勤めていて、正直に仕事をしていれば、試用期間だからという理由で簡単に切られることはまずありません。能力の立ち上がりの遅さは受け入れ側もある程度織り込んでいます。中途採用のコストを知っている人事は採った人を短期間で手放したくないんです。
あなたが心配しているほどこちらは切りたがっていません。
最初の3ヶ月で、受け入れ側が見ていること
中途入社者の立ち上がり、3ヶ月の実際の観測ポイント
成果は入っていません。
手加減じゃなくて3ヶ月では成果が出る仕組みになっていないからです。顧客も社内の関係もまだ渡り終わっていない。だから現場のマネージャーが人事に報告してくるのはたいてい「よく聞いてくれるので進めやすい」か「なんとなくやりにくい」のどちらかでした。
1ヶ月目の「聞けているか」が最重要です。中途入社者の最大の落とし穴がここにあります。即戦力として採られた自覚があるほど、「こんなことを聞いたら期待外れだと思われる」と考えて聞けなくなる。で、自己流で進めて3ヶ月後に大きくやり直す。私が受け入れ側で見てきた失敗は、この型が目立って多かった。
受け入れる側の本音を。
最初の3ヶ月に質問が多い人ほど、こちらは安心するんです。質問は「分かっていない」のサインではなく「うちのやり方に合わせようとしている」のサインとして受け取られる。逆に何も聞かずに静かな人は順調なのか詰まっているのか分からない。ちょっと不安になります。
やりがちで、損をする3つの動き
中途入社者の立ち上がり
左上の「普通はこうです」は中途入社者が最も無自覚にやってしまう失点です。前職で正しかったやり方は今の会社では別の事情の上に成り立っていないことが多い。同じ内容でも「前職ではこうしていましたが、こちらの事情に合いますか」と差し出せば経験値として歓迎されます。
言葉の形が違うだけで受け取られ方が逆になるんです。
左下の「人間関係を早々に分類する」も実務的に効きます。入社直後に親切にしてくれる人が社内でどういう立ち位置なのかは、最初の1ヶ月では分かりません。誰かの評判を早く飲み込むとそのフィルターが後から外れなくなる。判断を保留するのは消極ではなく戦略です。
入社前後の事務。抜けやすいところだけ

手続きは会社が案内してくれますが、こちらから動かないと詰まるものだけ挙げます。
- 年金手帳/基礎年金番号・雇用保険被保険者証:前職から受け取る書類。退職時に確保しておく。
- 源泉徴収票:前職の退職後に発行される。年内に転職した場合、新しい会社の年末調整に必要なので、届いたらすぐ提出する。
- 健康保険の空白期間:退職日と入社日が離れると、その間は国民健康保険か任意継続の手続きが要ります。入社日が翌月頭なら空白が出ることがあるので、要確認。
- 住民税:退職月によって一括徴収か普通徴収かの扱いが変わります。手取りの感覚が最初の数ヶ月ズレるのはたいていこれが原因です。
- 入社初日の持ち物:印鑑・通帳情報・本人確認書類。連絡が来ていなければ、前日までにこちらから聞いていい。
人事側の視点を一つ足すと、提出物の期日を守る人はそれだけで最初の評価が上がります。
地味ですけど。
入社直後にこちらが観測できる情報は本当にこれくらいしかないので、比重が大きいんです。逆に書類が揃わない人は業務でも同じだろうと推測されます。不本意な推測ですが、実際に起きています。
3ヶ月経ったら、一度立ち止まる
最後に。試用期間が明ける頃に一度自分で振り返ってください。見るのは成果ではなく「面接で聞いた話と実際が合っているか」です。
逆質問の設計で「最初の3ヶ月で期待されること」を聞いていた人は、ここで答え合わせができます。ズレていたら、3ヶ月目の面談で率直に出していい。この時期の擦り合わせは受け入れ側もむしろ望んでいます。放置されて半年後に「話が違った」となるよりはるかにいいので。
で、明らかに違った場合。
3ヶ月で判断を下す必要はありませんが、その違和感を記録だけはしておいてください。次に動くときのいちばん正確な材料になります。転職は一度きりの選択ではなく判断の繰り返しだと思っています。
ここまでで転職活動の全工程が一周しました。工程全体をもう一度見返したい人は転職活動の全体地図へ。前の工程は退職の切り出し方と引き止め対応です。