面接で聞かれることは、だいたい決まっています。
転職理由。自己紹介。強みと弱み。志望動機。5年後。他社の状況。この6つで面接時間の大半が埋まります。
なのに毎回きつい。なぜかというと、答えを用意しているのに「何を確かめられているか」を知らないまま話すからです。私は採用側の人事として面接に入り、約500人の応募者を評価する側に座っていました。その前は転職エージェントで、送り出す側でもありました。ここでは6つの質問ごとに採用側が何を見に行っているかを開示します。答え方のテンプレは出しません。意図が分かれば、答えは自分の経歴から出てきます。
6つの質問は、3つの確認に紐づいている
先に構造から。面接で見ているものは、そんなに多くありません。
面接官が確認している3つと、そこにぶら下がる質問
私が使っていた評価シートは、大きく3系統でした。要件との合致、人物タイプ(志向性・ストレス耐性・エナジーギバーかテイカーか)、そしてビジネススキル。合否会議で最後まで割れるのは、たいてい「活躍するか」と「定着するか」の2点です。部門は実力面を見て、人事は入社後に活躍できるかと長く続くかを見る。人事はリスクを嫌うので、どちらかに不安が残ると票が割れます。面接の質問はその不安をつぶす材料を集めるために置かれていて、雑談に見える質問にも、たいてい評価シートのどこかの欄が紐づいています。
6つの質問は、この3つを別角度から突いているだけなんですよね。
覚えるのは6つの答えではなく、3つの確認のほうです。
①転職理由。見ているのは不満の中身ではない
一番よく聞かれて、一番誤解されている質問です。
ここで落ちる人、多い。
多くの人が「ネガティブに聞こえないように変換しよう」とします。気持ちは分かる。ただ採用側が見ているのはそこじゃない。その不満が、うちに来たら解消されるのかどうかです。
残業が理由なら、うちの繁忙期はどうなのか。評価に納得できないなら、うちの評価制度なら納得するのか。ここが繋がっていない転職理由を聞くと、こちらの頭には「たぶんこの人はうちでも同じ理由で辞めるな」という予測が立ちます。定着の話です。
だから前向きに言い換える必要はありません。
事実を言って、そのあとに「だから次はここを見ている」を足す。これだけで通ります。この形に自分の理由を当てはめるところは転職理由の雛形にしてあります。残業・評価・人間関係など6パターン分、事実を変えずに言う形を並べました。私自身、耳ざわりのいい言い換えを並べた人より、生々しい理由をそのまま置いていった人のほうがずっと記憶に残っていて、合否会議でも自然と擁護していました。
②自己紹介・経歴。面接官はここで質問を選んでいる
冒頭1分の自己紹介。
あれは挨拶ではないです。
聞きながら面接官は「どこを深掘りするか」を決めています。
話に出た仕事のうち、求人の要件に近いものに印をつけている。だから新卒からの経歴を古い順に全部読み上げられると、こちらは印をつける場所を見失って、結局いちばん最後に話された直近の仕事から掘り始めることになります。それが要件と一番遠い経験だったりする。もったいない。
出す順番は、求人の要件に近い経験から。3つに絞る。残りは聞かれたら出す。この作り方は面接の準備の仕方に書きました。
③強み・弱み。強みは「どこで効くか」まで
強みの答えで多いのが、性格の話です。粘り強い、調整が得意。
悪くはないけれど、これだと評価シートが埋まりません。私が見ていたのはビジネススキルの型でした。「見立てる・仕立てる・動かす」のどこに強い人かです。
強みの言い方。評価に乗らない/乗る
右側の4つ目が地味に効きます。プロセスを語れる人は、環境が変わっても再現できると読まれるからです。
これ、けっこう差がつきます。
弱みのほうは、そこまで重く見ていません。
見るのは2つ。自己認識があるか、そして放置していないか。それだけです。「弱みはありません」だけが困ります。
④志望動機。熱意の量ではなく、つじつま
志望動機は熱意テストだと思われがちです。違います。
読まれているのは経歴とのつじつまです。これまでやってきたことと、この会社でやりたいことが線で繋がるか。志望動機を書けないと悩む人の多くは、熱意が足りないのではなく、自分の経歴とその会社の求人票をまだ突き合わせていないだけだと思います。繋がっていれば、熱っぽい言葉はいりません。
答えはたぶん、あなたの職務経歴書の中にあります。詳しくは志望動機で読まれているものへ。
⑤5年後。将来設計を採点しているわけではない
「5年後どうなっていたいですか」。
毎回、空気が固くなる質問です。
これで焦る人が多いんですが、精密な人生設計を求められてはいないです。見ているのは、その姿がこの会社の中で叶うかどうかという一点で、たとえば独立志向を強く語られると、こちらは応援したい気持ちと定着への不安を同時に抱えることになります。
会社の中に道がない答えだと、定着の欄に印がつく。それだけの話です。
やりたいことが固まっていないなら、それはそれで言っていい。私は「やりたいことがない」から始まる面接をたくさん見ました。むしろ「やりたくないこと」から輪郭を作った人のほうが、話が具体的でした(やりたい仕事がないまま転職していい)。
⑥他社の選考状況。落とすための質問ではありません
これを聞かれると身構える人、多いです。

前日の夜に想定問答を眺めながら、他社のことは伏せておこうか、それとも正直に言うべきか迷って、結局その場で曖昧に濁す。何社か受けていますが、まだ初期段階でして。声が小さくなる。あの数秒のあいだ、面接官の側は駆け引きを疑っているのではなく、日程表を頭の中で開いています。
社内側の事情を言うと、この質問は主にスケジュール調整のためです。他社の最終が近いなら、こちらの日程を前に倒す必要がある。決裁のスケジュールを組み直すには、他社の進み具合を知っておかないと動けないんです。あと、応募している会社の並びから会社選びの軸が一貫しているかを見ています。
業界も職種もバラバラだと、軸が読めない。逆に方向が揃っていれば、それ自体が定着の材料になります。定着は転職回数ではなく、軸の一貫性で判断されやすい。 私が見てきた範囲では、ここは会社が変わってもあまりブレませんでした。
6つの質問の裏で何が確認されているかは、面接官チェック項目に項目の形で整理してあります。
暗記していい。ただし一段深く掘られる前提で
最後にひとつだけ。
暗記の話です。
準備して臨むこと自体は、評価する側として前向きに見ていました。減点にはなりません。問題は丸暗記のときに起きます。
暗記はだいたいバレます。
内容ではなく「間」でバレる。句読点の位置と息継ぎのタイミングが不自然になるんです。変なところで言葉に詰まり、変なところで息を吸う。自分の頭で考えながら話している人はそこが自然に揺れるので、聞いている側は言葉の中身を判定する前に、リズムのほうで「これは再生だな」と気づいてしまいます。
ただ、暗記そのものを責めるつもりはありません。準備してきた人ほど台本を作るし、台本を作った人ほど本番で言葉に詰まるのが怖くなる。その気持ちは私も転職者として経験があります。ここで言いたいのは「準備するな」ではなく、準備する対象を答えの文章から材料に切り替えたほうが本番で崩れにくい、という一点だけです。
そして丸暗記だと、一段掘られたときに答えが急に浅くなる。質問とズレる。準備した答えを話すこと自体は、面接官も気にしていません。 その先を聞かれても自分の言葉で答えられるか。確認しているのはそこです。
準備するなら、答えの文章ではなく材料を。ここが面接対策で頭が真っ白になる理由とも繋がります。工程全体の地図はこちら。