「面接で頭が真っ白になる」人はたいてい準備のしすぎで真っ白になっています。想定問答を30個暗記して、どれを聞かれるかに怯えている状態。

面接官側の席から、先に種明かしを。

質問が30種類あっても、確認したいことは3つしかありません。 3つに答える準備だけすればどの質問が来ても同じ場所に着地できます。

私は面接官として中途採用の面接をしてきた人事です。評価シートを付ける側、そして面接後の合否会議に出る側。座って話を聞いた人は、約500人になります。その前は転職エージェントを5年、あとから人事コンサルを3年。「面接に送り出す側」にもいました。この記事は面接テクニック集ではなく、面接官が何を考えて座っているかを書くものです。

面接官が確認したい3つのこと

どの質問も、結局この3つを確認している

1 ①できるか スキル・経験がうちの仕事で通用するか 2 ②続くか カルチャーと環境に馴染んで定着するか 3 ③来るか 志望度。内定を出したら本当に来るか

①できるか(能力)。「これまでの業務内容を教えてください」「一番の成果は?」「困難をどう乗り越えた?」。全部これです。聞き方が違うだけ。面接官が探しているのは武勇伝ではなく、職務経歴書の記事でも書いた再現性です。あなたの行動パターンがうちでも機能するか。だから答えは「状況→自分の行動→結果」の順で、行動を厚く話すのが正解です。

②続くか(定着)。「転職理由は?」「どんな環境が働きやすい?」「弱みは?」。これらは②です。中途採用の面接官が一番恐れているのは、採った人がすぐ辞めることです。採用には費用も工数もかかっていて、早期離職は面接官自身の評価にも響く。だから転職理由の質問はあなたを責めるためではなく、「同じ理由がうちでも起きないか」を確認するためにしています。前職の不満を聞かれたら、不満そのものより「その不満が応募先では構造的に起きにくい理由」まで言えると、面接官は安心します。

③来るか(志望度)。「なぜうちなのか」「他社の選考状況は?」。③です。企業側も断られます、普通に。内定辞退は採用計画の狂いなので、志望度は本気で気にしています。ここは正直さと戦略のバランスですが、少なくとも「第一志望群です」と言える程度の整理はして行くべきです。

手元の評価シートには、何が書いてあるか

3つの確認事項は、面接官の頭の中の話。次は物理的に手元にある紙の話をします。

会社ごとに様式は違いますが、私が使ってきた評価シートは項目が3系統に分かれていました。

ひとつ、スキルと経験。求人票の要件に合っているかどうか。ここは機械的です。

ふたつ、人物タイプ。人となり、志向性、ストレス耐性。それと、周りのエネルギーを増やす人か、奪っていく人か。主観が入る欄です。入るのを承知で付けます。

みっつ、ビジネススキル。私のいた現場では「見立てる・仕立てる・動かす」という言い方をしていました。

ビジネススキルは、この3つのどこに強みがあるか

1 見立てる 状況を読んで、何が問題なのかを特定する 2 仕立てる 解決の筋道と段取りを設計する 3 動かす 実行する。人を巻き込み、狂ったら立て直す

3つ全部が強い人はまずいません。だから面接官は「どれが強いか」を見ています。ポジションによって、欲しい配合が違うので。

これ、じつは厚生労働省が定義している「ポータブルスキル」を現場の言葉に畳んだものです。公的な枠は9要素あります。「仕事のし方」が現状の把握・課題の設定・計画の立案・課題の遂行・状況への対応の5つ。「人との関わり方」が社内対応・社外対応・上司対応・部下マネジメントの4つ。これに専門知識・専門技術を加えた3分類(厚生労働省 ポータブルスキル見える化ツール)。

分解としては正確です。ただ、面接の45分で9個は追えない。だから現場では、見立てる=現状の把握と課題の設定、仕立てる=計画の立案、動かす=課題の遂行と状況への対応と人との関わり方、というくらいの粗さに束ねて見ていました。自分の棚卸しに使うなら3つで十分だと思っています。

合否会議で割れるのは、いつも同じ2点

3系統の評価を持ち寄って、会議で何を議論するか。実際に議論が長引くのは、だいたい2つでした。

活躍するか。定着するか

面白いのは、部門と人事で見ている場所がずれることです。部門側は実力を見ます。うちの事業を前に進めてくれるのか。人事はその先を見ている。入ってから活躍できるか、そして続くか。人事はリスクを嫌う仕事なので、短期離職の履歴があると手が止まりやすい。

ここで効いてくるのが再現性です。

転職すると環境も人もやり方も変わりますよね。その中で同じパフォーマンスが出せるのか。「仕事ができます」というアピールは、半分しか答えていないんです。答えていないもう半分が、活躍するかの中身。

定着のほうも誤解が多いので書いておきます。見られているのは転職回数ではなく、軸の一貫性です。 志向性、やりたいこと、会社の選び方。3回変わっていても軸が1本なら、話は通る。逆に1回しか転職していなくても、理由がその都度ばらばらだと引っかかります。回数を数えて怯えるより、並べ直して1本にするほうが早い。

評価シートに書いてあることを、こちら側から確認できる形に直したのが面接官チェック項目です。面接前に一度目を通すと、暗記の代わりになります。

「真っ白」対策は、暗記をやめること

頭が真っ白になるのは暗記した台本と違う質問が来たときです。

台本が30本あると検索に失敗して焦る。焦るとまた真っ白になる。でも確認事項が3つだと知っていれば、どんな質問でも「これは①②③のどれを聞かれているんだっけ」と考えるだけでいい。

準備としてやるべきなのは想定問答の暗記ではなく、3つの問いへの自分の答えを2〜3個ずつのエピソードで持っておくことです。

  • ①できるか → 自分の行動が結果につながった話を2つ
  • ②続くか → 転職理由を「不満」でなく「次に求める環境」の言葉で1つ
  • ③来るか → その会社でないといけない理由を、求人票の言葉ではなく自分の言葉で1つ

これだけです。

エピソードは面接ごとに変わりません。変わるのは③だけ。だから2社目以降の面接準備は実は1社目よりずっと軽くなります。

暗記は、内容ではなく「間」でバレる

ここで、面接官側から気まずい話をひとつ。

台本を暗記してきた人は、けっこう分かります。ただし分かる理由が、たぶん想像と違う。

バレるのは中身ではなく、間の位置です

具体的に言うと、句読点と息継ぎのタイミングです。人は自分の頭で考えながら話すとき、考えている場所で自然に止まるので、詰まる位置そのものに意味が出てくる。ところが再生モードに入ると、そこがずれるんです。何でもないところで急に言葉に詰まる。区切りじゃない場所で息を吸う。変な間ができる。生々しさが抜ける、というのが座って聞いている側の感覚に一番近い表現かもしれません。

じゃあ暗記は減点なのか。ここは分かれます。私は減点にしていませんでした。

事前に準備してアウトプットを整理してくる。それ自体は前向きに評価します。むしろ何も考えずに来る人より百倍いい。

問題は、丸暗記のときだけ起きます。 その場で自分の頭を動かしていないので、一段深掘りされると急に浅くなる。あるいは、質問と答えがずれる。聞かれたことに答えていない状態です。落ちるのはここであって、暗記していたこと自体ではありません。

面接官が同じ話を二度三度と掘るのは、意地悪をしたいからじゃない。暗記の下に、自分の考えがあるかを確かめているだけです。深掘りされても話がズレないなら、覚えて準備しても問題ありません。捨てる必要はない。見直すべきなのは、追加で聞かれた途端に答えられなくなる準備の仕方です。

面接官も、実はうまくない

これは採用側にいないと分からない話なので書いておきます。

面接官の大半は面接のプロではありません。 現場のマネージャーが業務の合間に面接に入っている、面接官トレーニングを受けたことがない、質問が場当たり的。これが多くの会社の実態です。構造化面接(全候補者に同じ質問をして比較する手法)を整備できている会社のほうが少数派だと思います。中にいる感覚では、たぶんそうです。だから面接官の質問が下手で答えにくいことは普通に起きます。抽象的な質問が来たら、「◯◯という理解で、△△の経験の話をしてもいいですか」と自分から具体化していい。面接官側からするとこれは生意気ではなく、むしろありがたい。会話を前に進めてくれる人は「仕事でもこう動くんだろうな」と①の加点になります。面接は試験ではなく、下手同士の共同作業くらいに思っておくのが精神衛生上もちょうどいいです。

落ちたときの解釈だけ、先に渡しておく

不合格の解釈——していいもの・しなくていいもの

しなくていい解釈 人格を否定された 経歴が無価値だった 面接が全部だめだった 実際によくある不合格理由 既存メンバーとの構成バランス 求める経験との部分的なズレ 別候補者との相対比較で僅差 配属予定部署の事情変更

合否会議に出ていた側から言うと、不合格の理由は「候補者がだめだった」より「うちの都合と噛み合わなかった」のほうがずっと多い。部署の事情、既にいるメンバーとのバランス、同時期の別候補者との相対比較。あなたの面接の出来と関係ない変数が山ほど絡んでいます。僅差で見送りにした候補者の顔は、こちらも覚えているものです。落ちた面接の反省は1日だけして、あとは変数のせいにして次へ行ってください。それは現実逃避ではなく事実に即した解釈です。

面接に呼ばれる前の書類の段階で詰まっている人は書類の"読まれ方"へ、エージェント経由の面接対策サポートの実態を知りたい人はエージェントの仕組みへ。シリーズの地図はこちらです。