「面接後にお礼メールを送るべきですか」という質問には、転職サイトや採用コンサルタントの立場から書かれた記事が大量にあります。そのほとんどが「送るべき」「印象が上がる」という方向にまとまっています。
私は採用担当として、面接の翌日や当日夜に届くお礼メールを何通も受け取りました。受け取る側から見ると、書かれていることと実態がずれている部分があります。そのずれを、受け取ってきた側から整理します。
採否が決まるタイミングは、メールより早い
面接が終わると、人事担当と面接官はほぼ必ずその日のうちに評価を共有します。社内の選考管理ツールに評価シートを登録したり、チャットで一言交わしたり、形式はさまざまですが、「次に進めるかどうか」の判断は面接終了直後に固まることが多い。お礼メールが届くのは、その後です。「昨日の候補者からメールが来ました」という情報が選考結果を変えるかといえば、変わらないことがほとんどです。評価は評価として記録されていて、メールで上書きされるものではありません。
これを「だから送らなくていい」と読むのは、少し早い。採否に直接影響しないことと、送る意味がないことはイコールではありません。
「来なかった」は何も思わない
お礼メールが来なかった場合、特に何も思いません。面接で丁寧に対応して、次の選考に進める評価をつけた候補者からメールが来なくても、その評価が変わることはありません。「お礼メールを送らないと礼儀知らずに見られる」という不安を持っている方に伝えると、少なくとも私の経験では、来ないことで悪い印象を持ったことはありません。
「来た」ときに何を見るか
届いたメールは読みます。長い文章でなくても開きます。見ているのは、面接で受けた印象との一致です。面接では少し硬い印象だった候補者から、砕けた言葉で面接で話した内容への感想が書いてあると、「あの場面では緊張していたのかもしれない」という見方になることがあります。反対に、面接ではよく話していた候補者から、定型文そのままのメールが来ると、温度の差が目に入ります。メールの内容が採否を変えることはほぼありませんが、面接で受けた候補者の印象が補完されることはあります。
逆効果になる書き方
お礼メールで「印象が下がった」と感じたケースがあります。一番多かったのは、定型文のコピーペーストです。「本日はお時間をいただき誠にありがとうございました。ご検討のほどよろしくお願い申し上げます」という内容だと、面接で実際に何を話したかがゼロ反映されています。メールが来ていないのと、情報量としては変わりません。
もう一つは、面接で出なかった意欲の宣言です。「改めて御社への志望度が高まりました」という一文が、面接では終始硬く、志望動機もほぼ語れていなかった候補者から届いたとき、その候補者への見方は変わりません。書いた言葉と面接でのやり取りが合っていないと、かえって不自然に見えます。
書く価値があるのはこの一点だけ
では、お礼メールが意味を持つのはどういうときか。面接の中で言えなかったことや、聞かれなかったことを一言書いた場合です。
「面接でうまく答えられなかった○○についてですが、正確には△△という経験があります」のように、補足できる内容がある場合は送る価値があります。採否の材料に直接なるかどうかは状況次第ですが、面接官の記憶に残っている疑問への補足として機能することがあります。この補足がない場合、「送ったほうがいい」という義務感から書いた文章は、受け取る側に伝わります。
採否への影響はほぼなく、送らなくても礼儀を欠いたとは見られません。送るなら、面接で実際に話した内容と接続した文章であること、できれば補足できる情報があることが条件です。その条件を外れたメールは、送ったことの意味があまりない、というのが受け取る側の実感です。