志望動機が書けない。焦って例文サイトを巡回している。
その人に読む側から先に種明かしをします。採用側は志望動機で「熱意の量」を測っていません。測っているのは「つじつま」です。 これを知らずに例文を写すと、熱意は盛れてもつじつまが壊れます。
私は採用側の人事として応募書類の志望動機を読んで合否に関わる立場にいて、エージェント時代には送り出す側として求職者の志望動機を添削する立場にいました。この記事は例文集ではありません。例文は大手サイトに何百種類もあります。ここに書くのは「その例文が読む側にどう見えているか」です。
例文コピペは、なぜ一瞬で分かるのか
読む側をやっていると例文由来の志望動機は開いて数秒で分かります。
魔法じゃなくて構造で分かるんです。
例文の志望動機はどの会社に出しても成立してしまう。「貴社の成長性に魅力を感じ」「お客様に寄り添う姿勢に共感し」。この文の「貴社」を競合他社に入れ替えても文章は破綻しません。読む側は毎日何通も読んでいるので、この「入れ替え可能性」への感度だけ異様に高くなります。逆にその会社でしか成立しない一文が1つあるだけで、書類の温度は変わります。
もう一つの見分けポイントは経歴とのつじつまです。職務経歴書には「安定した環境で着実に」という人生が書いてあるのに、志望動機には「変化の激しい環境に挑戦したい」とある。これはどちらかが嘘か自己分析をしていないかのどちらかで、読む側はどちらでも同じ評価をつけます。志望動機は単体で読まれず必ず経歴と突き合わせて読まれる。
ここが例文サイトでは絶対に補えない部分です。
「書けない」の正体は文章力ではない
エージェントとして添削していた頃、志望動機が書けないという相談の原因はほぼ全員同じでした。
文章力ではありません。
応募理由が本当に「ない」んです。 求人条件で絞って、待遇で選んで応募した。それ自体は健全な転職活動です。でも建前を書こうとするから筆が止まる。読む側も知ってます。中途採用の応募理由の本音が条件と待遇であることくらい、採用担当は分かった上で読んでいます。
では何を確認しているか。
読む側が志望動機で確認している3点
3つとも熱意じゃないんです。測っているのはリスク。
採用側にとって最悪なのは内定辞退と早期離職です。志望動機はその予測材料として読まれています。だから「なぜ弊社なのか」への完璧な愛社精神は要らなくて、「なぜこの仕事を続けられると思うのか」に事実で答えてあれば十分なんです。
経歴とのつじつまは、志望動機だけを見ても判断できません。職務経歴書側と並べて確認する項目は職務経歴書チェックリストにあります。
通る志望動機の構造。熱意ではなく接続
書けない人向けに、読む側から見て最低限押さえたい構造を図にしました。
志望動機の組み立ての差
型としては「過去の事実→そこから生まれた基準→その基準で御社を選んだ→入社後の再現」の一本線です。気づいてほしいのは、この線の材料がぜんぶ自己分析の棚卸しから出てくるということ。志望動機が書けないのは志望動機の問題ではなく、自己分析の工程を飛ばした症状です。
順番を戻せば書けます。
一つ現実的な補足を。応募数が多い時期に全社分の志望動機を書き分けるのは正直、無理があります。読む側の実感で言えば力を入れる価値があるのは志望度の高い数社だけで、それ以外はつじつまが壊れていない標準版で構いません。全部に全力を求める精神論は途中で活動自体を止めてしまうので。何社受けるかの目安を含め、応募工程の全体は転職活動の全体地図にあります。
最後に、面接との関係だけ。
書類の志望動機は面接でそのまま音読を求められるものではなく、面接官の質問リストの原料になります。書いたことは掘られます。必ず。だから盛った志望動機は書類を通っても面接で自分を撃つ弾になる。書類で盛らない理由は実利です。倫理じゃなくて。面接で何を確認されるかは面接官の視点の記事に書きました。
例文を探すのはこの構造を知ってからでも遅くありません。というより、構造を知ってから読む例文は「写す対象」ではなく「接続の参考」に変わっているはずです。
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