面談のあと、少し引っかかっている。悪い人ではなさそうだけど、話の持っていき方に違和感がある。この人の言うことをどこまで信じればいいのか。
こういうとき、たいていは担当者の人柄を判定しようとします。誠実そうか、こちらの話を聞いているか。ただ、その見方だと当たり外れの話にしかなりません。
見るべきなのは、その人の給料がどこから出ているかです。
エージェントの報酬は、あなたからではなく採用した企業から出ます。しかも入社が決まったときにだけ発生する。すると、エージェントの利害はこうなります。「あなたが幸せになること」ではなく「あなたがどこかに決まること」と一致している。
これは悪意ではなく設計です。そして、この一致がうまく働く場面と、ズレる場面がはっきり分かれます。どこで一致してどこでズレるかを知っていれば、信用するかしないかの二択で悩む必要がなくなります。
手数料の実額を公開している会社がある
「企業から手数料をもらっている」というところまでは、多くの記事に書いてあります。ただ、金額まで書いてあるものは少ない。相場として理論年収の3割前後と言われていて、これは業界の慣行としてよく挙がる水準です(転職エージェントはなぜ無料なのか)。
実額を公開している会社が1社あります。ジョブメドレーを運営する株式会社メドレーの開示です。
「求職者からの手数料は一切頂きません。」
「成功報酬 当該求職者の就職後1年間に支払われる賃金(内定書や労働条件通知書等に記載されている額)の100%または1,000,000円のうちいずれか高い方」
株式会社メドレー「職業安定法第32条の13に基づく開示事項」 medley.jp (当サイト確認 2026-08-12)
これは法令に基づいて届け出た上限であって、毎回この額を取っているという意味ではありません。それでも、求職者が1円も払わない一方で、企業側には年収に連動した金額が発生しているという構造は、この1枚の開示ではっきり見えます。
実際にどのくらいの率で取られているかは、2025年4月1日から公開が義務になりました。厚生労働省のリーフレットにこうあります。
「令和7年4月1日から職業安定法に基づく省令及び指針が一部改正されます」「(1)令和6年度に徴収した紹介手数料の実績(※)を、『人材サービス総合サイト』に掲載してください ※ 職種別の常用就職1件当たりの平均手数料率を算出。」
厚生労働省リーフレット(LL061030需01) mhlw.go.jp (当サイト確認 2026-08-12)
計算式も原文に書かれています。「求人者から徴収した手数料の総額 ÷ 求職者の予定年収の総額」。つまり手数料は年収に比例します。
ただし公開されるのは、直近年度の、常用就職の実績が多い上位5職種だけです。実績が10件以下の職種は掲載不要。全部が見えるわけではありません。
ここまでで押さえておきたいのは1点だけです。担当者が年収の高い求人を勧めてくるとき、その動機はあなたの生活の心配だけではない。悪いことではなく、両方が同時に真であるだけです。
利害が一致している場面では、遠慮なく使い倒していい
先に、疑わなくていい側の話を書きます。「決まってほしい」という動機がそのままこちらの利益になる場面は、けっこう多いです。
- 年収交渉。手数料が年収に連動するので、上がって困る人がいません。むしろ交渉はエージェント経由のほうが通りやすい場面があります(内定後の年収交渉)
- 企業への確認。聞きにくいことを代わりに聞く役として使う分には、利害が対立しません
- 書類の通し方。書類が通らなければ売上も立たないので、添削は本気の側に入ります(職務経歴書で最初に読まれるところ)
- 日程の調整。在職中の面接日程を動かす作業は、代わりにやってもらったほうが早い
実際、この使い方を明言している投稿があります。
「エージェントを通して外資系と日系を受けて、オファーをもらってからそれを元に入りたい企業の給料交渉してもらいましょう。そうでないと足元を見られます。」
イングリッシュマフィンさん・★4.00・2026.02.11 minhyo.jp
信用するかしないかを人格で決めようとすると、ここまで使い切れません。構造で見ると、使っていい場面が具体的に決まる。
利害がズレるのは、この3か所
一方で、「決まること」と「あなたにとっていい選択であること」が食い違う場面があります。口コミで繰り返し出てくるのは、だいたい次の3つです。
① 承諾を急がされる
いちばん多く、いちばん具体的に書かれているのがここです。
「2つの会社で迷っていたときも、5分以内に結論をだすように言われました。自分の人生選択5分はさすがに厳しかったです。」
ぽよさん・★1.00・2019.11.30 minhyo.jp
「内定の連絡後は「次の日までに返事がほしい」と急かされ(中略)絶対転職した方がいいなどと1時間近く説得され、首を縦に振らないと話を終わらせてくれないような圧を感じ、つい承諾してしまいました。」「その直後メールが送られてきて「今すぐこのメールに返事してください、それをもって正式に承諾したことになります」と言われ」
りりっくさん・★2.00・2025.04.10 minhyo.jp
投稿者が理由まで書いているものもあります。
「正式な内定通知書を12時過ぎにメールで送っていただき、回答期限はその日中。(月末だったのでその月の売り上げにしたかった、、?)」
nnnntさん・★1.00・2026.07.12 minhyo.jp
括弧の中は投稿者の推測です。ただ、月次で数字を管理していれば月末に締めたくなるのは、仕組みとしては自然です。
そしてもう一つ、企業側の金額を承諾の理由として説明されたという投稿があります。
「「企業は多額の費用を支払っているので、とにかく内定を承諾すればよい」といった趣旨の説明があり」
とんとんさん・★1.00・2026.04.03 minhyo.jp
企業がいくら払っているかは、あなたがその会社で働き続けられるかとは関係のない情報です。承諾の判断に持ち込む理由がありません。承諾の前に何を確認しておくかは、オファー面談で聞くことにまとめてあります。承諾したあとで気が変わった場合の扱いは内定承諾の重さのほうです。
② 辞退させてもらえない
決まりかけた話を降りると、その時点までの時間が売上にならない。だから引き止めが起きます。
「「希望の求人に内定が出たので、それ以外の選考を辞退したい」と連絡した所「比較対象があった方がいいので」としつこく説得され仕方なく受けることに」
にゅーとりもさん・★2.00・2022.04.21 minhyo.jp
「辞退の旨を伝えても、エージェントが推している仕事だと、「え、辞退するんですか??え、なんで??」というニュアンスで、しつこく止めてきて押し売りがすごかったです。」
えのぴとさん・★2.00・2026.05.16 minhyo.jp
③ 情報を減らす方向の助言が来る
判断材料が増えると決まりにくくなる、という場面もあります。
「Doda「何で調べるんですか?、ネットで調べると悪い評価がのってるのは当たり前です。やめてください。もしそうやって調べて求人を断るのであればあなたに紹介できる求人はなくなりますよ!」といわれました。」
山ちゃんさん・★1.00・2019.11.05 minhyo.jp
口コミを鵜呑みにするなという助言自体は正しいことがあります(読み方は口コミサイトの読み方に書きました)。ただ、調べるなという助言はそれとは別物です。
3つに共通しているのは、時間の圧力がかかる方向にだけ助言が偏っていることです。急げ、断るな、調べるな。判断を早める方向の助言が続いたら、その助言が誰の時間軸から出ているかを一度考えてみてください。
信用の代わりに使える、公的な確認手段が3つある
人柄で判断しなくて済むように、外から確認できる材料を並べます。どれもほとんど知られていません。
① 「紹介した人が6か月以内に何人辞めたか」は国のサイトに出ている
職業紹介事業者には、実績を国に報告して公開する義務があります。都道府県労働局のリーフレットに、情報提供が必要な事項が列挙されています(原文のまま)。
「① 各年度(各年の4月1日~翌年の3月31日)の紹介により就職した者の数」 「② ①のうち、期間の定めのない労働契約を締結した者(無期雇用就職者)の数」 「③ ②のうち、就職から6か月以内に解雇以外の理由で離職した者の数」 「④ ②のうち、就職から6か月以内に解雇以外の理由で離職したかどうか明らかでない者の数」
都道府県労働局リーフレット「職業紹介事業者の皆さまへ」(LL050509需01) jsite.mhlw.go.jp (当サイト確認 2026-08-12)
根拠は職業安定法第32条の16第3項。掲載先は厚生労働省の人材サービス総合サイトで、登録も課金もなしに誰でも見られます。
ここで大事なのは④です。③が少なくても④が大きければ、それは「辞めていない」ではなく「追っていない」。これは私の読み方であって、厚労省がそう説明しているわけではありません。それでも、離職者数だけを見て安心するのは早いとは言えます。
なお、実際には欄が空いている会社が多く、当サイトが調べた6社のうち数字を出していたのは1グループだけでした(転職エージェント6社比較に一覧があります)。
② 紹介で入社した人を2年間、転職に誘ってはいけない
2025年1月1日から、職業紹介事業の許可条件にこれが追加されました。
「⚫ その紹介により就職した者(期間の定めのない労働契約を締結した者に限る。)に対し、当該就職した日から2年間、転職の勧奨を行ってはならないこと。」
厚生労働省・都道府県労働局リーフレット mhlw.go.jp (当サイト確認 2026-08-12)
同じ資料に「お祝い金その他これに類する名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて求職者に金銭等を提供すること」も許可条件で禁じられたと書かれています。
入社して半年で、同じエージェントから別の求人が届いたら、それは許可条件に照らして問題がある可能性があります。信用できるかどうかを感覚で測るより、この一点のほうがはっきりしています。
③ お祝い金は2025年4月から求人サイトにも広がった
職業紹介ではこれまでも原則禁止でしたが、求人サイト側(募集情報等提供事業者)にも拡大されました。
「労働者に金銭やギフト券等を提供することは原則禁止になります」
厚生労働省リーフレット「募集情報等提供事業者の皆さまへ」(LL061030需02) mhlw.go.jp (当サイト確認 2026-08-12)
ポイント付与も原則禁止の対象だとQ&Aに明記されています。一方で例外もあり、「抽選による少数者に対して、500円程度の電子ギフト券等」のアンケート謝礼や、転職フェア来場への500円程度の提供は対象外とされています。
だから「面談でギフト券」を一律に怪しむのは行きすぎです。線が引かれているのは金額と趣旨で、入社や登録の対価として大きな金額が動くものが禁止側にあります。
不満の型が全社で同じ、ということの意味
当サイトは15社・250件超の口コミを4つのグループに分けて集めました(収集日 2026-08-12、出典はいずれも各社のみん評ページ)。分けて集めたのに、不満の見出しがほぼ同じところに集まりました。
会社をまたいで繰り返し出てくる不満
これは、どの会社もだめだという話ではありません。会社ごとの善し悪しではなく、業界の構造が見えているということです。成功報酬で、決まらなければゼロで、担当者の時間が有限。この3つを置けば、どの会社でも同じ形の不満が出ます。
会社ごとの差は別のところに出ます。求人がどこから来ているか、企業担当と求職者担当が分かれているか、拠点がどこにあるか。この比べ方は転職エージェント6社比較にまとめました。
だから、口コミが悪いという理由で登録先を1社に絞るのは、あまり意味のある選び方ではありません。口コミはどの会社でも同じ形に集まるので、そこで差がつかない。差が出るのは、同じ職務経歴書を複数社に渡したときに返ってくる求人の中身のほうです。これは自分の経歴でしか測れないので、他人の投稿からは分かりません。

それでも合わないと感じたときの順番
信用できないと感じた相手と、そのまま付き合い続ける必要はありません。ただ、いきなり退会するのは早い場合があります。
同じ会社の中で、担当者によって体験がまるで違うという投稿が複数あります。
「一回目は女性の方でこの方は真摯に対応してくださり(中略)二回目の方は若い男性の方で、前回の方とは正反対なようなノリだけでやってるような適当な対応で正直ガッカリしました。」「同じサイトでもこんなに人によってムラがあるんだと知りました。」
すんさん・★1.00・2026.01.20 minhyo.jp
「今は担当を変えて頂いて、今のところ大丈夫そうです。変えてもらって思うのは、同じマイナビなのに担当を変えてもらうだけでこんなに違うんだと実感し」
パンダさん・★1.00・2019.03.16 minhyo.jp
順番としては、担当者の変更を頼む(頼み方)、それでも変わらなければ別の会社を足す、になります。会社ごと切り替えるより手数が少なくて済みます。
そして、エージェントを使わないほうがいい場合もあります。応募したい会社がもう決まっていて、その会社が直接応募も受け付けているなら、間に人を挟む理由はあまりありません。企業側から見れば、紹介経由の応募者には手数料が発生し、直接応募には発生しない。この差が選考でどう働くかを一般化できる公開データは見つかりませんでしたが、エージェントに断られたあと直接応募で内定を得た人が、入社後に採用側からこう聞いたという記録はあります。
「直接応募でエントリーしたことは採用担当側からするとかなり好印象だった」
note「転職エージェントに断られて直接応募したら内定が出た話」タイツの清盛・2025/9/9 note.com
1人の体験です。ただ、エージェント経由が唯一の道ではないことの実例にはなります。
判断に使える形にまとめると
- エージェントの報酬は求職者ではなく採用企業から出て、入社が決まったときにだけ発生します。額は年収に連動します(メドレーの開示:就職後1年間の賃金の100%または100万円のいずれか高い方が上限)。
- 2025年4月から、職種別の平均手数料率の公開が義務になりました。ただし直近年度・上位5職種のみです。
- 利害が一致する場面(年収交渉・企業への確認・書類添削・日程調整)では、遠慮なく使ったほうが得です。
- ズレるのは、急がせる/辞退を止める/調べさせない、の3方向。どれも時間を早める側に偏っているのが共通点です。
- 感覚で信用を測る代わりに、公的に確認できるものが3つあります。6か月以内の離職者数と「不明」の数、2年間の転職勧奨禁止(2025年1月1日から許可条件)、お祝い金の原則禁止(求人サイトにも2025年4月から拡大)。
- 不満の型が会社をまたいで同じなのは、会社の質ではなく業界の構造が見えているからです。1社の口コミで判断先を絞る必要はありません。
信用するかしないかを決めなくても、転職活動は進みます。決めるのはどの場面で使い、どの場面で自分で判断するかのほうです。
紹介そのものが止まっていて、そもそも判断する材料が来ていないなら、エージェントから求人が来ないときに何が起きているかを先に読んだほうが早いと思います。断りの連絡まで来ている場合はエージェントに断られたときの判定の中身に、社内でどう決まっているかを書きました。