「職務経歴書に書けるような実績がない」。
この悩みで手が止まっている人に、書類を読んで合否をつけてきた側から先に答えを言います。落とす側は実績の大きさをほとんど見ていません。見ているのは「再現性」です。 あなたがやったことがうちの会社でも起きそうか。
私は採用側の人事として応募書類を読む立場にいて、その前は転職エージェントとして書類を「送る側」にいました。エージェント5年、人事3年、人事コンサル3年。この間に目を通した応募書類は、数えていませんが数千枚です。自分の転職で書いた側でもあります。この記事は「書き方のテンプレート」ではなく読む側の頭の中を開示する記事です。テンプレは大手サイトに山ほどあります。そちらでどうぞ。読まれ方を知ってからテンプレを使うと埋め方が変わるはずです。
最初の30秒で見るのは3箇所だけ
書類選考は1通に何分もかけません。応募が多い求人だと最初のスクリーニングは1通あたり数十秒です。冷たい話に聞こえるかもしれませんが、読む側も業務としてやっている以上そうなります。
その数十秒で見るのは私の場合この3つでした。
読む側が最初の30秒で見る3箇所
1つ目、冒頭の職務要約。 ここで「何ができる人か」が一言で分からない書類はその先を読む優先度が下がります。だからこそ、職務経歴書では冒頭5行にいちばん時間をかけます。全体を書き終えてから最後に書き直すのがいい。2つ目、直近の職務内容。 10年前の実績より直近2〜3年に何をやっていたかです。採用側は「今のこの人」を買うので、昔の栄光が長い書類はむしろ不安になります。3つ目、在籍期間の並び。 転職回数そのものよりパターンを見ています。毎回2年未満で辞めているのか、節目ごとにステップを上がっているのか。ここは取り繕えない部分なので、取り繕おうとせず面接で語れる説明を用意しておくほうが健全です。
読む気が失せる書類は、だいたい同じ形をしている
数千枚も読むと、冒頭で手が止まる書類と、そのまま最後まで行く書類の差がはっきりしてきます。
読む気が失せるほうは、形が決まっています。結論のないまま、長々と書き連ねてある。 これに尽きます。丁寧に書いてあるんです。誠実でもある。ただ、読み終わるまで何の人か分からない。
分かれ目は文章力ではありません。読み手の気持ちになれているかどうか、その一点です。私が見ていたのは3つ。自分の良さを端的にPRできているか。結論から書いているか。そして、受ける業界と会社を前提にしたPRになっているか。
この3つの中では、最後の条件を満たすのが最も難しいです。
本人にとってはPRでも、その業界とその仕事にとっては何一つPRになっていない。 これ、本当によくあります。書いた人は嘘をついていないし、頑張ったことを頑張ったと書いているだけなのですが、読む側が握っている求人票には、その頑張りを評価する欄がそもそも用意されていない。だから読み飛ばされる。
だから書く前にやることは、自分の棚卸しだけじゃないんです。
相手が今どんな人手を欲しがっているか。それを掴んで、そこに合わせて情報を出す。書類では、自分を紹介することより、相手が求めていることに答える必要があります。ここが決定的に効きます。
「実績がない」人が誤解していること
冒頭の話に戻ります。
「売上を2倍にした」みたいな実績がなくて書けないという相談は、エージェント時代から数え切れないほど受けました。
読む側の本音を言うと、派手な数字は実はそんなに信用してないんです。「売上2倍」は市況かもしれないし、チームの成果かもしれない。数字単体では判断できないことを読む側は知っています。じゃあ何を信用するか。行動の具体性です。「業務改善に取り組んだ」ではなく「毎週手作業だった集計を、手順を見直して半分の時間にした」。後者には課題を見つける目と自分で手を動かした事実が入っています。この粒度で書かれていると「この人はうちに来ても同じ動きをするだろうな」と想像できる。それが再現性です。
実績とは表彰されたことではなく、あなたが繰り返し取ってきた行動のことです。この定義に置き換えると書けることがない人はいません。
面談で「実績がないんです」と言う人でも、日々のプロセスのどこかに自分なりの課題感を持ってさえいれば、キャッチボールを何往復かするうちに語れる行動と改善はだいたい出てきます。やりにくいと思っていた作業。おかしいと感じたまま放置されていた手順。そこに対して自分が何をしたか。数字がついていなくても、それは十分に再現性の材料です。
実績と数字ばかりPRしていて、掘ると何も出てこない人。 読む側として一番困るのはこのタイプでした。なぜその数字になったのか、自分は何を変えたのか。二段掘ると言葉が止まる。結局、市況かタイミングかブランドで売れていただけだった、という着地になります。
実績が目立つ書類でも、面接で詳しく聞くと評価が変わることがあります。
読む側の判定基準は、たぶんこの一行に集約されます。自分の頭で試行錯誤しているか。 数字はその証拠として便利なだけで、証拠は数字でなくてもいい。
エージェントに送られる書類は、実はもう一段階ある
ここは元エージェントとして開示しておきます。エージェント経由で応募する場合、あなたの職務経歴書は多くの場合そのまま企業に届きません。エージェント側で「推薦文」が付きます。 担当者があなたを企業に売り込む文章です。
要は、エージェント経由の書類選考は「あなたの書類の出来」と「担当者の推薦文の熱量」の合わせ技で決まります。そして推薦文の熱量は面談であなたが担当者に「推しやすい材料」をどれだけ渡せたかに比例します。面談で経歴を淡々と話すだけの人と、「この経験はこういう場面で活きると思う」と自分から言語化できる人では企業に届く書類の温度が変わる。
特別な方法ではなく、エージェントの仕組みから説明できます。エージェントの仕組み自体を知りたい人は転職エージェントの仕組みの記事に書きました。
書き上げたあと、送る前に見ておく項目を職務経歴書チェックリストにまとめました。冒頭5行の確認もそこに入っています。
その冒頭5行が埋まらないまま止まっているなら、職務要約の雛形を使ってください。ここで書いた「読む側が何を見ているか」を、1行ごとに雛形の横に置いてあります。
読まれない書類の共通点
最後に、書類選考で実際に気になった書き方をまとめます。
もったいない書類と、読まれる書類
頑張った人ほど分厚くなるんですよね。でも読む側の時間は変わらないので、分厚い書類は読み飛ばされる面積が増えるだけなんです。書類は自分史ではなく応募先へのプレゼン資料。応募する企業ごとに厚くする場所を変えるのが理想ですが、しんどければ職務要約だけでも応募先に合わせて書き換えてください。冒頭5行が一番読まれるので費用対効果はそこが最大です。
なお最近は「AIが書類を読んで落とすのでは」という不安もよく聞きますが、実情は思われているのと結構違います。これは別の記事で採用側の実態を書いたので、不安な人はそちらを。
書き方のテンプレを探す前に今日持ち帰ってほしいのは一つだけです。読む側は、これまでの経験から入社後に活躍できそうかを確認しています。その判断に必要な情報が伝わる職務経歴書にしてください。
次の工程は応募です。→ 転職エージェントの仕組みと使い方 / シリーズ全体は転職活動の全体地図へ。