「職務経歴書に書けるような実績がない」。この悩みで手が止まっている人に、書類を読んで合否をつけてきた側から先に答えを言います。落とす側は、実績の大きさをほとんど見ていません。見ているのは「再現性」です。 あなたがやったことが、うちの会社でも起きそうか。それだけです。
私は採用側の人事として応募書類を読む立場にいて、その前は転職エージェントとして書類を「送る側」にいました。自分の転職で書いた側でもあります。この記事は「書き方のテンプレート」ではなく、読む側の頭の中を開示する記事です。テンプレは大手サイトに山ほどあるので、そちらでどうぞ。読まれ方を知ってからテンプレを使うと、埋め方が変わるはずです。
最初の30秒で見るのは3箇所だけ
書類選考は1通に何分もかけません。応募が多い求人だと、最初のスクリーニングは1通あたり数十秒です。冷たい話に聞こえるかもしれませんが、読む側も業務としてやっている以上、そうなります。
その数十秒で見るのは、私の場合この3つです。
1つ目、冒頭の職務要約。 ここで「何ができる人か」が一言で分からない書類は、その先を読む優先度が下がります。逆に言うと、職務経歴書で一番時間をかけるべきは冒頭5行です。全体を書き終えてから、最後に書き直すのがいい。
2つ目、直近の職務内容。 10年前の実績より、直近2〜3年に何をやっていたかです。採用側は「今のこの人」を買うので、昔の栄光が長い書類はむしろ不安になります。
3つ目、在籍期間の並び。 転職回数そのものより、パターンを見ています。毎回2年未満で辞めているのか、節目ごとにステップを上がっているのか。ここは取り繕えない部分なので、取り繕おうとせず、面接で語れる説明を用意しておくほうが健全です。
「実績がない」人が誤解していること
冒頭の話に戻ります。「売上を2倍にした」みたいな実績がなくて書けない、という相談は、エージェント時代から数え切れないほど受けました。
読む側の本音を言うと、派手な数字はそれほど信用していません。「売上2倍」は市況かもしれないし、チームの成果かもしれない。数字単体では判断できないことを、読む側は知っています。
信用するのは、行動の具体性です。「業務改善に取り組んだ」ではなく「毎週手作業だった集計を、手順を見直して半分の時間にした」。後者には、課題を見つける目と、自分で手を動かした事実が入っています。この粒度で書かれていると、「この人はうちに来ても同じ動きをするだろうな」と想像できる。それが冒頭で言った再現性です。
実績とは、表彰されたことではなく、あなたが繰り返し取ってきた行動のことです。この定義に置き換えると、書けることがない人はいません。
エージェントに送られる書類は、実はもう一段階ある
ここは元エージェントとして開示しておきます。エージェント経由で応募する場合、あなたの職務経歴書は多くの場合そのまま企業に届きません。エージェント側で「推薦文」が付きます。 担当者があなたを企業に売り込む文章です。
つまりエージェント経由の書類選考は、「あなたの書類の出来」と「担当者の推薦文の熱量」の合わせ技で決まります。そして推薦文の熱量は、面談であなたが担当者に「推しやすい材料」をどれだけ渡せたかに比例します。面談で経歴を淡々と話すだけの人と、「この経験はこういう場面で活きると思う」と自分から言語化できる人では、企業に届く書類の温度が変わる。
これは裏技ではなく構造の話です。エージェントの仕組み自体を知りたい人は転職エージェントの仕組みの記事に書きました。
読まれない書類の共通点
最後に、落とす側から見た「もったいない書類」の典型を置いておきます。
とくに最後の「力作」問題は根深いです。頑張った人ほど分厚くなる。でも読む側の時間は変わらないので、分厚い書類は読み飛ばされる面積が増えるだけなんです。書類は自分史ではなく、応募先へのプレゼン資料。応募する企業ごとに厚くする場所を変えるのが理想ですが、しんどければ職務要約だけでも応募先に合わせて書き換えてください。冒頭5行が一番読まれるので、費用対効果はそこが最大です。
なお最近は「AIが書類を読んで落とすのでは」という不安もよく聞きますが、実情は思われているのと結構違います。これは別の記事で採用側の実態を書いたので、不安な人はそちらを。
書き方のテンプレを探す前に、今日持ち帰ってほしいのは一つだけです。読む側は、あなたの過去を審査しているのではなく、自社での未来を想像しようとしている。その想像を助ける書類が、通る書類です。
次の工程は応募です。→ 転職エージェントの仕組みと使い方 / シリーズ全体は転職活動の全体地図へ。