職務経歴書のいちばん下。
自己PR欄。
ここで手が止まる人、本当に多いです。職務要約と経歴は事実を並べれば書けるのに、自己PRだけカーソルが点滅したまま10分経つ。
理由ははっきりしています。自己PRだけ「材料が手元にない」状態で書かされているからです。経歴は履歴を写せばいい。自己PRは、自分の中から探して、選んで、翻訳しないと出てこない。私はエージェントと採用側の両方で、数千枚の応募書類を読んできました。読む側から見て、埋まらない原因と埋め方を順番に書きます。
自己PR欄で落ちるのは、内容ではなく宛先
先に、読む側の実感から。
順番の話です。
自己PRで残念に思うのは、文章が下手なときじゃないです。その人にとってはPRなのに、その業界・その仕事にとっては何のPRにもなっていないとき。
たとえば、社内の誰よりも丁寧に議事録を作っていた話。本人にとっては誇りです。でも応募先が求めているのが「一人で数字を作る営業」なら、この話はどこにも刺さりません。書いた本人はいちばん自信のある経験を出しているのに、読む側は「で、この人はうちの何ができるんだろう」と思いながらページをめくることになる。この行き違いが、私が読んできた書類の中でいちばん多い失点でした。
もったいない。
文章の問題じゃないんです。
同じ経験でも、宛先を決めると届く
右側は、どれも左側と同じ経験を言い換えただけです。経験を足してはいません。変えたのは宛先だけ。
書く前に応募先の求人票をもう一度開いてください。自己PRは求人票への返事だと思うと、急に書きやすくなります。求人票の読み方は求人の読み方にまとめました。
棚卸しは「厚労省の3分類」を借りると早い
とはいえ、宛先が決まっても材料がなければ書けません。
ここで詰まる。
自分の経験を並べる枠として、私は厚生労働省が公開しているポータブルスキルの整理を借りるのがいちばん早いと思っています。職種を越えて通用する能力を国の側が定義したもので、誰でも見られる枠組みなので、自分の経験がどの引き出しに入るのかを機械的に振り分けていくだけで棚卸しが進みます。
ポータブルスキルの3分類(厚労省)
出典は厚生労働省の案内ページです。
自己PRで効くのは、たいてい②と③です。①は経歴欄でもう書いてあるので。
重複させても紙が増えるだけ。
②の5要素は、そのまま質問にできます。紙に5行書いて、直近の仕事を1つ思い出しながら埋めてみてください。
- 現状の把握: そのとき、何が起きていた?
- 課題の設定: 何を問題だと決めた?
- 計画の立案: どういう順番でやると決めた?
- 課題の遂行: 実際に何をした?
- 状況への対応: 途中で崩れたとき、何を変えた?
5行埋まれば、自己PRの材料はもう揃っています。あとは順番を入れ替えるだけ。
この5行、面接でもそのまま使えます。というより、面接で深掘りされるのはまさにこの5行のどこかで、用意しておくと当日ずいぶん楽になります。
採用側が読んでいるのは「見立てる・仕立てる・動かす」
私が使っていた評価シートには、ビジネススキルの欄がありました。
この欄で、評価にはっきり差が出ました。
そこで見ていたのは3つです。見立てる(課題を見つける)・仕立てる(解決策を設計する)・動かす(実行してチームを巻き込む)。どこに強い人か。
さっきの5要素と重なります。現状の把握と課題の設定が「見立てる」に当たり、計画の立案が「仕立てる」、遂行と状況への対応が「動かす」に当たると考えると、厚労省の枠と評価シートの欄がだいたい同じ場所を指していることが分かると思います。
3つ全部が強い人は、そんなにいません。
だから1つに寄せて書いたほうが伝わります。全部書くと、ぼやけて何も残らない。
実績がない、と思っている人へ
面談で「実績がないんです」と言う人、たくさん見てきました。
だいたい、うつむいて言う。
その人たちの書類が、いちばん惜しい。
話を掘っていくと、プロセスの中に明確な課題感を持っていることが多いんです。何に困って、どう考えて、どこを変えたか。それを一つずつ聞き出していくと、本人が実績と呼んでいなかっただけで、十分に語れる行動と改善がぽろぽろ出てくる。面談の途中で本人が驚くこともあります。
逆にいちばん困るのは、数字ばかり並んでいるのに深掘りすると何も出てこない書類です。よく読むと、タイミングとブランドで売れていただけだったりする。
判定基準はひとつです。
見ているのはシンプルで、自分の頭で試行錯誤しているかどうか。数字の大きさではありません。
だから実績欄が寂しくても、②の5要素で語れるなら自己PRは成立します。ここは職務経歴書で最初に読まれる場所とも地続きの話です。
書き方の型。3段で200〜300字
材料が出たら、形にします。
長さは200〜300字。読む側の負担が急に軽くなる分量です。逆に600字を超えたあたりから、私はページの下半分を目で飛ばすようになっていました。書いた側からすると信じたくない話だと思いますが、何十枚も続けて読む日はどうしてもそうなります。
順番はこれで足ります。
3段だけ。
- 結論(自分の強みを1行で。求人票の言葉に寄せる)
- 場面(いつ、何が起きて、何をしたか。数字があれば入れる)
- 接続(その強みが、応募先のどの仕事で効くか)
3が抜けます。
3の「接続」を書いていない自己PRが本当に多いです。ここが宛先そのものなので、抜けると1と2がいくら良くても届きません。
もうひとつ。長々と結論なく書き連ねると、読む気が失せます。 これは書き手の能力の話ではなく、読み手の時間の話です。1枚に何十枚も続くうちの1枚として読まれている前提で、最初の1行に結論を置いてください。

書けたら、出す前に一度職務経歴書チェックリストで見返してください。宛先がずれていないかは、書いた直後より項目に沿って見るほうが分かります。
使い回しは、どこまで許されるか
正直、全社分を書き分けるのはしんどい。
私も転職者としてやりました。心が折れる。
現実的な折衷案としては、2と3を分ける形が回しやすいと思います。
- 1と2(結論・場面)は2〜3パターン作って固定する
- 3(接続)だけ応募先ごとに書き換える
これなら1社あたり数分。全文を書き直す必要はありません。
書き分けを完全にやめてしまうと、さっきの「本人にとってはPRでも、その業界にとっては何のPRにもならない」状態にまっすぐ戻ります。だから最後の3行だけは、その会社のために書いてください。
最後に、空欄のままでいいかという話
自己PR欄を空欄で出す人がたまにいます。
これ、どうなのか。
落ちるとまでは言いません。
ただ、並べられます。ただ、書類は必ず他の応募者と並べて読まれます。同じような経歴が3枚続いたあとで、自分の言葉が1行も書かれていない書類は、単純に思い出す手がかりがなくて記憶から抜け落ちていきます。
うまい文章でなくていい。
5要素を埋めた紙が1枚あれば、自己PRは今日書けます。 出す前に、応募先の求人票をもう一度だけ開いてください。
書類が通ったあとの話は書類選考で落ちる理由と面接の準備の仕方へ。工程の地図はこちら。