評価面談の案内がカレンダーに入る。

何を話せばいいのか分からないまま当日を迎えて、伝えられた評価に「はい」と答えて、最後に「来期も頑張ります」で終わる。毎回これ。しかも終わったあとに、言いそびれたことを思い出す。

先に事実を書きます。あなたの今期の評価は、面談が始まる前にほぼ確定しています。

人事として評価を集約する側にいました。各部署から評価が上がってきて、それを調整して確定させる工程を回す側です。面談は決定の場ではありません。 ここを知らずに臨むと、30分まるごと無駄になります。

評価は、面談の前に一度集約されている

順番を見てください。

評価が確定するまでと、面談の位置

1 ① 本人が自己評価を出す 期末。ここが唯一、本人が直接書き込める工程 2 ② 一次評価者(直属の上司)がつける 部下の評価を並べて相対的に見る 3 ③ 二次評価・部門での調整 部署をまたいで基準を揃える。分布の調整が入る 4 ④ 確定 昇給・賞与の原資に紐づく 5 ⑤ 面談で本人に伝える ここ

面談は一番右にあります。

面談の場でどれだけうまく説明しても、④で確定した数字は動きません。上司が「なるほど」と思っても、その上司にはもう変える権限がない。翻すなら部門の調整をやり直すことになります。他の人の評価にも影響が出る。だから動かないんです。

そういう構造です。

だから面談で今期の弁明に時間を使うのは、構造的に一番割の合わない使い方なんです。

やるなら①です。自己評価を出す工程。ここが本人の書いた文章がそのまま上に流れる唯一の場所で、実際、一次評価者は自己評価の欄を読んでから点をつけます。面談で言うつもりだったことは、自己評価に書いてください。 順番として、そちらが先です。

それでも面談で変わるものが、ひとつだけある

今期は動かない。ただし、動くものが1つ残っています。

来期の目標と期待値です。

面談の時点で今期の点数は確定しています。ですが来期の目標はまだ紙になっていない。多くの会社で評価面談と目標設定の面談は同じ時期に続けて行われます。確定したものを聞く場と、これから決めるものを握る場が、同じ30分の中に同居しているわけです。

得をしている人は、ここに時間を寄せています。

今期の評価に対して「なぜこの点なのか」と食い下がるのではなく、「どの成果が評価されたのか」「次に何があれば一段上がるのか」を聞いて帰る。この2つの答えを持って帰った人は、来期の目標設定を自分に有利な形で書けます。

  • どの成果が点になったか(=続けるべきこと)
  • 何が足りなかったか(=来期の目標に書き込むべきこと)

この2つを聞くだけで、次の1年の設計図が手に入る。ここを聞かずに帰る人が、とにかく多い。もったいないんですよね。

前日に用意する3枚

準備は3枚。A4である必要も、きれいである必要もありません。手元のメモで十分です。

前日に用意する3枚

何を書くか ① 今期やったことの棚卸し(事実だけ・15行) ② 自分の評価と、伝えられた評価のズレ ③ 来期に任せてほしいこと 面談のどこで使うか 「どの成果が評価されたか」を聞くときの土台になる ズレの大きい項目だけを1つ選んで、理由を聞く 目標設定の話に入ったら、こちらから先に出す

1枚目は事実だけ。「頑張った」は書かないでください。何を、いつ、どれくらいの3点で15行。数字が出せるものは数字で。数字の出ない職種なら担当した件数や関わった人数でいい。ここで大事なのは説得力ではありません。忘れている成果を自分で思い出すことのほうです。半年前の仕事は驚くほど覚えていない。カレンダーとメールの送信済みを遡ると出てきます。

15行。埋まらなければ10行でいい。

2枚目はズレの確認用。自己評価と伝えられた評価が違った項目を探します。ただし全部を並べて反論するのではなく、ズレが一番大きい1つだけを選ぶ。複数を持ち出すと、面談が反論の場になって、来期の話に入る時間が消えます。

3枚のうち、いちばん力を入れたいのは3枚目です。来期に任せてほしい仕事を、先に言葉にしておく。目標設定は、こちらから何も出さなければ上司が持っている枠の中で決まります。先に出しておけば、その枠に自分の希望が入る余地ができる。

3枚。10分あれば書けます。

当日、話す順番を間違えない

順番を1つ間違えるだけで、同じ内容が言い訳に聞こえます。

正しい順番はこれです。

  • ① 事実を確認する(「今期はこれとこれを担当しました」)
  • ② 評価の理由を聞く(「どの部分が評価されて、どこが足りなかったですか」)
  • ③ 来期の話に移す(「その足りない部分を、来期はこう埋めたいです」)

やってはいけないのは、自己評価から入ること。「自分としてはよくやったと思っているのですが」で始めると、そのあと何を言っても評価への不満として処理されます。上司の側も身構えるので、そこから先の会話が全部防御になる。

先に事実。次に質問。最後に提案。

この順番だと、上司から見ると「準備してきた人」になります。そして地味な話ですが、この印象は次の期の評価に効きます。目標設定の場面で、任せる仕事の範囲を決めるのは上司だからです。

評価に納得できないとき、どこまで言っていいか

言っていいです。ただし言い方が全部です。

「納得できません」は使わないでください。 この言葉が出た瞬間に、会話が評価の妥当性をめぐる議論になります。そして前述の通り、点数は動かない。動かないものを議論しても、残るのは「あの件で揉めた」という記録だけです。

代わりに使うのはこれ。

「何が足りなかったか、具体的に教えてください」

同じ不満から出発していますが、上司が答えられる質問になっています。しかもこの質問には、上司の側にも答える義務がある。評価の説明は一次評価者の仕事なので、ここで曖昧な返事しか返ってこないなら、それは評価が説明できない状態だという情報が手に入ります。

人事側の話をすると、「納得していない」という情報自体は上がります。ただ上がった先でどう扱われるかは、伝え方でかなり変わる。感情として上がった場合はその人の問題として処理されがちで、具体的な事実のズレとして上がった場合は確認が入ることがあります。同じ不満でも、届き方が違うんです。

たとえば担当した案件が評価シートに載っていないとか、期の途中で担当が変わったのに前の目標のまま評価されているとか、こういう種類のズレは事実の確認で済む話なので、指摘すれば普通に直ります。逆に「自分のほうが同僚より働いている」という形の訴えは、どれだけ本当でも動かしようがない。前者を探して、後者は面談に持ち込まないほうがいいと思います。

言い方だけです。

そして、その場で解決しようとしないこと。

評価が動かないことを転職の理由にしていいかは、別の軸で考えたほうがいい。会社の問題と職種の問題を分ける転職判断シートを置いてあります。

それでも変わらないなら

2期続けて同じ評価で、理由の説明も具体的にならない。この状態が続くなら、それはもう個人の準備の問題ではありません。

あなたの仕事が、その会社の評価の枠に載っていないという可能性が出てきます。評価制度は職種ごとの重みが決まっていて、そこに乗らない働き方をしている人はどれだけ成果を出しても点になりにくい。これは会社との相性の話で、努力で埋まる種類のものではないです。

そのときに初めて、外を見る話が出てきます。年収を上げるのが目的なら、社内の評価より先に構造を見たほうが早い場合がある。→ 年収を上げる転職は、交渉のうまさより「どの枠に乗るか」

辞めるかどうかで迷っているなら、まず不満の出どころを切り分けてください。→ 転職すべきか。その不満は会社のせいか、職種のせいか