エージェントとの面談を「キャリア相談の場」だと思って丸腰で行く人と、「就職面接みたいなもの」だと思って建前で武装して行く人がいます。元エージェントから言うと、どちらも損をします。面談は相談の場であると同時に、担当者があなたの「支援優先度」を決める査定の場です。この二重性を分かって話すことが、面談準備のすべてです。
私はエージェントとして面談する側に座っていました。面談の間、担当者の頭の中で何が動いているかを開示した上で、何を話すべきかを逆算します。
面談中、担当者は何を判定しているか
エージェントのビジネスモデル上(詳細は仕組みの記事)、担当者は限られた時間を決まりやすい求職者に配分します。面談はその配分を決める入口です。判定しているのは、経歴の強さだけではありません。
重要なのは3番目です。エージェント経由の応募では、担当者があなたの推薦文を書いて企業に送ります。推薦文の材料は、ほぼ面談で拾った話から作られます。 面談で経歴を年表の読み上げのように話すだけだと、担当者の手元には推薦文に書ける具体材料が残りません。「この経験はこういう場面で活きると思う」まで自分で言語化して渡せる人は、推薦文の温度が変わり、書類通過率に効いてきます。面談は、あなたの代弁者に台本を渡す場だと思ってください。
正直に話すこと、設計して話すこと
「エージェントにどこまで本音を言っていいのか」は面談前の定番の悩みです。元中の人としての整理はこうです。
正直に話すべきこと: 転職理由(ネガティブなものでも)、他社エージェントの利用状況、選考中の他社、希望年収の本音、家庭の事情などの制約。この辺りを隠すと、担当者は精度の低い情報で求人を選ぶことになり、的外れな紹介が届くだけです。特に転職理由は、そのまま企業に伝わるわけではありません。担当者が企業向けの言い方に翻訳するのが仕事なので、面談では翻訳前の生の理由を渡したほうが機能します。他社利用も隠す必要はなく、業界的に併用は前提です。むしろ選考状況を共有しておくと、日程調整や年収交渉の材料として使ってくれます。
設計して話すべきこと: 転職の時期と本気度です。ここだけは正直さが不利に働き得る。「半年〜1年以内には」と伝えると、仕組み上、優先度は今すぐ動く人より確実に下がります。嘘をつく必要はありませんが、情報収集目的でも「良い求人があれば3ヶ月以内に動くつもり」と言える程度の準備をしてから面談に臨むほうが、出てくる求人の質は上がります。
話さなくていいこと: 完成された志望動機や、取り繕った強み。面談は選考ではないので、ここで盛っても、盛った条件で求人が選ばれて後で自分が苦しむだけです。
面談前の準備は3つで足りる
面談のために自己分析を完成させる必要はありません。担当者は言語化を手伝うのが仕事なので、材料さえ持っていけば成立します。持っていく材料は3つです。
棚卸しメモの作り方は自己分析の記事と共通です。条件については「全部大事」が一番機能しません。担当者のデータベース検索は条件の掛け算なので、譲れない軸2つが明確な人には求人が出しやすく、全条件並列の人には出しにくい。面談の成果は、あなたの検索条件を担当者の頭に正しくインストールできたかで決まります。
最後に、面談後の話を。面談は一度きりの査定で終わりではなく、その後の行動で持ち点は動きます。紹介求人への返信が早い、辞退理由を具体的に返す(「なんとなく違う」ではなく「この規模の組織は前職の消耗と同じ構造なので」)。この積み重ねで、担当者の中のあなたの解像度と優先度は上がっていきます。逆に、面談で好印象でも連絡が滞る人は静かに後回しになっていく。エージェントとの関係は面談で始まる継続戦です。
面談の結果、そもそも紹介を断られてしまった場合の動き方は次の記事に書きました。エージェント以外の手段との使い分けを含め、全体像は転職活動の全体地図へ。