「人事 辞めたい」で検索してここに来た方へ。

まずは、今の気持ちのまま結論を急がなくて大丈夫です。

私は以前、転職エージェントで働き、「辞めたい」という気持ちが強い状態で面談に来る人を何人も見てきました。その後は私自身も転職し、今は採用する側の人事をしています。この記事では、辞めることも続けることも勧めません。まず辞めたい理由を整理し、職種を変える場合に人事経験をどう活かせるのかを考えます。判断を急がず、考えるための情報として使ってください。

「人事を辞めたい」には、種類がある

「辞めたい」がピークのまま動く前に、理由をほぐす(写真はイメージ)
「辞めたい」がピークのまま動く前に、理由をほぐす(写真はイメージ)

人事の「辞めたい」は私の見てきた範囲だとだいたい3種類に分かれます。

ひとつは板挟み疲れ。

経営の考えを社員に伝える一方で、社員から出た意見を経営に伝えても受け入れられないことがあります。双方の事情がわかる立場だからこそ、どちらとの間にも難しさが生まれる。この疲れ方は人事ならではです。それから、成果が見えにくいこと。営業なら数字で結果を確認できますが、人事は採用や労務などが問題なく進んでいても、その状態自体が成果として認識されにくい仕事です。評価されにくい環境が続けば、自分が何に貢献できているのかわからなくなることもあります。最後に会社への失望。人事は会社の意思決定の内側が見えすぎる仕事なんですよね。採用で語る理想と中で行われる現実のギャップを、一番近くで見続けることになる。

どれかによって取るべき行動は変わります。板挟みと成果の見えなさは「人事という職種」の問題じゃなくて、「今の環境」の問題であることが多い。会社への失望は職種を変えても次の会社でまた起きえます。

だから転職を考える前に、人事という仕事そのものを辞めたいのか、今の会社を離れたいのかは分けて考えたほうがいいです。

エージェント時代の実感としても、ここを切り分けずに転職した人は次でも同じ理由で悩みがちでした。「人事は続けたいが、専門分野を変えたい」という方は30代人事のキャリアパス——HRBP・採用・労務の選び方が参考になるかもしれません。

人事経験者の市場価値は、たぶんあなたが思っているより高い

渦中の自己評価は、ほぼ確実に実際より低い(写真はイメージ)
渦中の自己評価は、ほぼ確実に実際より低い(写真はイメージ)

辞めたい気持ちが強くなっている時期は、自分の経歴まで実際より低く評価しがちです。私自身も転職を考えたときはそうでした。

構造的な話をすると、2030年に約341万人、2040年には約1,100万人の労働供給不足が予測されています(リクルートワークス研究所「未来予測2040」2023年9月)。「人が採れない・辞めていく」が全企業の経営課題になる時代に、人と組織のことを実務でやってきた人の経験は職種の外でも使い道が広いんです。

人事経験が活きる異職種5つ

人事経験が活きる異職種5つ(実務と地続きな順)

1 人材業界 キャリアアドバイザー・RPO。採用実務がそのまま商品知識に 2 HR SaaSのカスタマーサクセス 「人事の業務がわかる」が最大の武器 3 広報・採用広報 会社の魅力の言語化はそのまま広報の入口 4 営業(無形商材) 採用は「会社を候補者に売る営業」 5 独立系の道 社労士・人事コンサル・複業人事。長期の選択肢

その上で職種を変えるならどこか。

人事の実務と地続きな順に並べます。

1. 人材業界(キャリアアドバイザー・RPO)。 人事から職種を変える場合でも、仕事内容をイメージしやすい選択肢です。採用実務の経験がそのまま商品知識になります。採用代行(RPO)は採用支援の市場として拡大傾向にある領域で、「企業側で採用をやっていた人」はまさに求められる経歴です。ただ、エージェント側にいた人間として書くと、支援する側には「決めるのは自分ではない」というもどかしさが常にあります。

2. HR SaaSのカスタマーサクセス。 労務管理やタレントマネジメントのツールを導入企業の人事に使いこなしてもらう仕事。「人事の業務がわかる」ことが最大の武器になります。人事あるあるの解像度がそのまま顧客への提案力になる。

3. 広報・採用広報。 採用で「会社の魅力を言語化して伝える」をやってきた人は広報の入口に立っています。社内の情報を集めて外に翻訳する動き方もよく似ています。

4. 営業(無形商材)。 意外に思われますが、採用は「会社を候補者に売る営業」です。候補者に入社してもらえるよう働きかけ、選考では見極めを行い、条件を調整し、ときには断られるところまで営業と共通しています。成果が数字で見える世界に行きたい人にはむしろ合うかもしれません。

5. 独立系の道(社労士・人事コンサル・複業人事)。 労務経験が長いなら社労士、制度設計の経験があるならコンサル。ただ、これは「辞めたい」の解決策というより長期の選択肢です。疲れている時に飛びつく道ではないと思います。

辞めたい理由が人事という職種にあるのか、いまの会社にあるのかは、分けて書き出すと見えます。分けるための転職判断シートがあります。

焦っている時にやらないほうがいいこと

焦って応募する前に

ピーク時に応募する 面接で「逃げたい」が透ける 渦中の自己評価は実際より低い 先に情報だけ集める 5職種の求人票を実際に読む 経験をどう説明できるか確かめる 冷静になってから判断する

エージェント側と採用側の両方から同じ光景を見てきました。「辞めたい」がピークの時期に応募すると、次の会社で何をしたいかより、今の会社を離れたい理由が受け答えの中心になりやすいです。面接官はそこを見ています。人事のあなたなら見る側として身に覚えがあるはずです。

順番としては先に情報だけ集めるのがいい。

転職サイトやスカウトサービスに登録して求人を眺めるのは応募じゃありません。上の5つの職種の求人票を実際に読んで、「これなら自分の経験をこう説明できる」と思えるものがあるか確かめる。そうすると、今の職場についても、残る理由と離れる理由を分けて考えやすくなります。辞める・辞めないの判断はその後でいい。

最後に、今の会社で部署や上司を自由に選び直せるとしても人事を辞めたいか、考えてみてください。それでも辞めたいなら、職種を変える選択肢を検討する意味があります。反対に、人事を続けたいと思えるなら、見直すべきなのは職種ではなく、今の環境かもしれません。


出典: リクルートワークス研究所「未来予測2040」(2023年9月)(労働供給不足の予測)。RPO市場規模の数値(矢野経済研究所)は集計範囲が採用代行単独ではなく3市場合計のため、本文から削除しました(2026-09-21)