60代で仕事を探そうとして、「60代 転職エージェント」で検索したところだと思います。「シニアに強いエージェント◯選」という記事はいくつも出てくる。読んでみると、どの記事も自信を持って会社名を並べている。

先に、調べて分かったことを書きます。

それらの記事が根拠にできるような情報は、探しても存在しませんでした

当サイトは、転職エージェント15社について250件を超える口コミを集めてきました。その中で、投稿者が50代以上と読み取れるものは5件。60代はさらに少ない。

そして、50代以上で「決まった」という口コミは1件もありませんでした。シニア特化をうたう会社に至っては、口コミサイトにページ自体がありません。

だからこの記事は「おすすめ◯選」の形をとりません。60代の転職について、出典を示して確かめられることだけを書きます。法律で決まっていること、国の統計、公的な窓口。そして「分かっていないこと」は、分かっていないと書きます。

60代向けの情報は、探しても出てこない。これは実際に調べた結果です

まず、どれくらい「ない」のかを具体的に書きます。当サイトが2026年8月に実際に調べた結果です。

シニア特化のエージェントに、口コミが1件もありません

60歳以上に特化した人材会社として、マイスター60という会社があります。ビル設備管理や施工管理などの技術系が中心の会社です。

この会社の利用者の声を、口コミサイトのみん評、Yahoo!知恵袋、X、note、はてなブログで探しました。結果はゼロ件。みん評にはページ自体が存在しませんでした。20代向けのエージェントには100件を超える書き込みがあるサイトで、です。

大手15社の口コミにも、60代はほぼ出てきません

集めた250件超の中で、年齢や年代に触れた投稿は13件。そのうち投稿者本人が50代前後と読み取れるものが4件、年齢を理由にされた体験が1件。60代とはっきり分かる投稿者は、59歳の1件が最も近いものでした。

そして繰り返しますが、50代以上で「決まった」という報告は1件もありません

大手の転職ノウハウサイトにも、50代以上に向けた記事はほぼありません

17サイトの記事の作りを調べたときの結果です。20代・30代向けの記事は大量にあるのに、年齢が上がると記事そのものが消えます。

念のため書いておくと、これは「60代は決まらない」という意味ではありません。分からない、という意味です。決まった人がいないのか、決まった人がネットに書き込まないだけなのか、そもそも登録する人が少ないのか。どれなのかを判別する材料がない。それがいまの状態です。

ひとつだけ、60代の体験談がまとまって読める場所があります。エン・ジャパンの「ミドルの転職」に、60代の転職体験レポートが93件公開されています。

61歳で「再雇用で給与水準が半分以下に下がる不安から転職を決意した」という法人営業の方など、実名のインタビューです。

ただしこの媒体は転職に成功した人だけを載せる作りです。うまくいかなかった人の話は構造的に載りません。読むときは、そのつもりで読んでください。

60代の就業の実態。数字はここまで取れます

年代別のエージェント実績は存在しませんが、60代がどう働いているかの国の統計はあります。総務省の労働力調査に基づく数字です。

就業率はこうなっています。

年齢 男性 女性
60〜64歳 84.0% 65.0%
65〜69歳 62.8% 44.7%

60代前半の男性は8割以上が働いています。60代後半でも6割以上。「60代で働くこと」自体は、珍しいことでも何でもありません。

ただ、働き方の中身を見ると、60歳を境にはっきり変わります。役員を除く雇用者のうち、非正規(パート・アルバイト・契約社員・嘱託など)の割合です(同じ出典・令和6年)。

年齢 男性 女性
55〜59歳 10.3% 58.1%
60〜64歳 41.3% 72.6%
65〜69歳 67.8% 83.2%

男性の非正規の割合は、50代後半の10.3%から、60代前半で41.3%、60代後半で67.8%まで上がります。60歳で定年を迎え、嘱託や契約社員として働き続ける人が多いことがこの数字に出ています。

ここから言えるのは、60代の仕事探しの中心は「正社員の転職」ではないということです。

エージェントという仕組みは、企業から成功報酬をもらって主に正社員の転職を仲介するものです。60代の働き方の実態がこの形から離れていくのだから、エージェントの情報が60代向けに存在しないのは、ある意味で当然の結果とも読めます。

同じ会社に残るのと、外に出るのは、法律の扱いがまったく違います

もうひとつ、先に整理しておきたいことがあります。「65歳まで働ける」「70歳まで働ける時代」という言葉を見かけると思いますが、これはいま勤めている会社に残る話です。外に出て転職する話ではありません。

法律の中身はこうです。高年齢者雇用安定法という法律で、企業には65歳までの雇用確保が義務づけられています。次のどれかを用意しなければなりません。

  • 定年の引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 65歳までの継続雇用制度

さらに2021年4月からは、70歳までの就業機会の確保が努力義務になりました。

つまり、いまの会社に残る道は、法律が企業側に義務を課す形で整備されています。一方で、会社の外に出た60代を採用する義務は、どの企業にもありません

だから、60代の転職を考えるときの最初の分かれ道は、エージェント選びではないと思っています。いまの会社に残る選択肢(継続雇用・再雇用)と比べて、外に出る理由があるか。ここが先です。

「再雇用だと給料が半分になる」という理由で外を探す人は実際にいます。それは合理的な判断になり得ますが、外に出た場合の条件が再雇用より良くなる保証はどこにもない、というのが上の統計の示すところです。

賃金が下がったときの給付は、2025年4月に縮小されています

再雇用で賃金が下がる場合、雇用保険から補てんされる制度があります。高年齢雇用継続給付といって、60歳以上65歳未満で、賃金が60歳時点の75%未満に下がった場合に支給されます。

注意が要るのは支給率です。2025年4月以降に60歳になった人から、給付率の上限が賃金の15%から10%に引き下げられました(2025年3月31日以前に60歳になった人は従来の最大15%のままです)。この制度は将来的な廃止の方向が示されています。

「賃金が下がっても給付で補える」という古い記事を読んで計算すると、ずれます。金額は人によって違うので、正確なところはハローワークで確認してください。

それでも民間のエージェントに登録するなら

ここまでを踏まえたうえで、それでも民間のエージェントを使ってみたい場合に、確かめられることだけを書きます。

「60代に強い」を裏づけるデータは、どの会社にもありません。エージェントが国に報告している実績(就職者数など)は法人単位で、年代の内訳がありません。

だから「60代の実績が多いのはA社」と書いてある記事の数字は、公的なものではありません。この構造は40代向けの記事で詳しく書いたので、ここでは繰り返しません。

かわりに、登録する前に知っておいてほしい制度がひとつあります。エージェントは「紹介した人のうち、就職から6か月以内に離職した人の数」を公開する義務があります

職業安定法第32条の16第3項で、情報提供の対象と定められているのは次の3つです。

  • 就職者数
  • 無期雇用での就職者数
  • 6か月以内の離職者数

厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で誰でも見られます。登録も課金も要りません。

気になる会社があったら、宣伝ページより先にここで名前を引いてみてください。ただし実際には欄が空いている会社が多いこと、数字が法人単位であることは、6社比較の記事に書いたとおりです。

60代に近い人の口コミとして引用できるものは、集めた250件超の中で次の2件がほぼすべてです。

ひとつは、スカウト型のビズリーチに登録した59歳の方の投稿です。

「エントリーするには、色々な条件があるが、その割には通常の求人媒体と給与は変わらなかった。私の場合、定年近い59歳だったためか、一般的な60代の減給が提示された。」

転職さんさん・★3.00・2024.10.30 minhyo.jp

登録できなかった、ではありません。オファーは来た。ただし条件は「60代の減給」を前提にした水準だった、という証言です。年齢が上がるほど、問題は「決まるか」から「いくらで決まるか」に移っていく。この投稿が★3で、全否定ではない点も含めて、実態に近い声だと思います。

もうひとつは、リクルートエージェントを使ったシニアの方の投稿です。

「高齢者社会だというのに、仕事はないし、仕事あっても減給されるし、求人の年齢不問は意味がない。」

りんりんさん・★2.00・2024.12.13 minhyo.jp

「年齢不問」と書いてある求人の読み方については、求人の読み方に書いています。求人票には年齢を書けないルールがあるので、書いていないことと、想定していないことは別です。

どちらも1件ずつの体験で、これを一般化はできません。ただ、60代でエージェントに登録した人の声として確認できたのは、この水準の情報量だということです。

シニア特化のマイスター60については、先に書いたとおり利用者の口コミがゼロ件で、当サイトから使い心地について言えることがありません。

参考として、同社が自社の登録者に行った調査(2018年・60歳以上の再就職成功者150名対象)では、再就職で最も苦労したことの1位が「年齢制限の壁」で27.3%でした。

自社調査であり第三者の検証はないので、そういう数字がある、というところまでです。

民間のエージェントを試すなら、エージェント診断で候補を2〜3社に絞ってから登録すると、無駄な登録が減ります。

60代の仕事探しで、いちばん現実的かもしれない窓口の話

ここからが、この記事でいちばん書きたかったことです。

転職の比較サイトは、公的な窓口のことをほとんど書きません。書いても記事の末尾に一行です。理由は単純で、公的な窓口を紹介しても、サイト側に紹介報酬が入らないからです

当サイトも民間エージェントの紹介で報酬を受け取ることがあるので、同じ構造の中にいます。そのうえで書きます。60代については、民間より公的な窓口のほうが現実的な場合があります。

ハローワークの「生涯現役支援窓口」

全国の主要なハローワーク300か所に、おおむね60歳以上の人を専門に支援する窓口が設置されています。生涯現役支援窓口という名前です。

受けられるのは次のような支援で、すべて無料です。

  • 職業相談
  • シニアの採用に前向きな企業の求人情報
  • 応募書類や面接の相談

民間エージェントとの違いは、収益の仕組みにあります。エージェントは企業からの成功報酬で動くので、決まりにくい人への対応は構造的に薄くなります。これは担当者の善し悪しではなく、事業の作りの話です。

ハローワークは税金で運営されていて、決まりにくい人を支援すること自体が仕事です。60代という、民間の収益構造から外れやすい層にとって、この違いは小さくありません。

窓口の名前は地域によって「シニアコーナー」「シニア応援コーナー」などと呼ばれることもあります。最寄りのハローワークにあるかどうかは、電話で確認してから行くのが確実です。

シルバー人材センター

もうひとつ、原則60歳以上の人を対象にした公的な仕組みとして、シルバー人材センターがあります。市区町村単位に置かれた団体で、高年齢者雇用安定法に位置づけがあります。

ただしこれは転職の窓口ではありません。扱うのは臨時的・短期的、または軽易な仕事で、多くは雇用契約ではなく請負・委任の形です。植木の手入れ、施設管理、事務補助といった地域の仕事を、会員登録した人に配分する仕組みです。

生活を支える収入源として設計されたものではないので、フルタイムで働きたい人には合いません。逆に、年金と組み合わせて地域で働きたい、という段階に入った人には、エージェントを探すよりこちらが実態に合います。

どう使い分けるか

私の整理はこうです。事実ではなく見解として読んでください。

  • 60代前半で、フルタイムで働き続けたい → まず、いまの会社の継続雇用・再雇用の条件を確認する。外を探すなら、生涯現役支援窓口とエージェントの併用。エージェントは断られることも紹介が来ないこともある前提で、断られても自分の値打ちの結論だとは受け取らない(断られたときの話
  • 60代後半、または週数日の働き方でよい → 生涯現役支援窓口が本線。シルバー人材センターも並行して検討する
  • 専門技術や資格(施工管理・設備管理・経理など)がある → マイスター60のような特化型が対象にしている領域なので、選択肢に入れて実際に話を聞いてみる。ただし口コミ情報が存在しないので、判断材料は自分の面談の実感だけになる

60代について、出典つきで言えること

  • 60代向けエージェントの口コミは、探してもほぼ存在しない(当サイト実測。シニア特化のマイスター60は0件、15社250件超のうち50代以上の投稿は5件、決まった報告は0件)
  • 「60代に強い◯社」を裏づける公的データは存在しない(国への報告は法人単位で年代内訳がない)
  • 60代前半男性の就業率は84.0%。ただし非正規の割合が60歳を境に急増する(労働力調査・令和6年)
  • 65歳までの雇用確保は企業の義務、70歳までは努力義務。いずれも「いまの会社に残る」話で、転職には適用されない(高年齢者雇用安定法)
  • 再雇用で賃金が下がったときの高年齢雇用継続給付は、2025年4月以降に60歳になる人から上限が賃金の10%に縮小された
  • ハローワーク300か所に、60歳以上専門の無料窓口(生涯現役支援窓口)がある
  • シルバー人材センターは原則60歳以上が対象。ただし臨時的・短期的な仕事で、転職の窓口ではない

分からないことは、分からないままです。60代でエージェント経由の転職が実際どれくらい決まっているのか、誰も数字を持っていません。数字が無い以上、「厳しい」とも「大丈夫」とも書きません。ここに書けるのは、いま確認できている事実だけです。

40代・50代の状況はまた違います。40代向けの記事50代向けの記事もあわせて読んでください。

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