求人サイトで「在宅」にチェックを入れ、条件に合う求人を一つ開いて、仕事内容も最後まで読みます。在宅について書かれているのは「一部在宅勤務あり」の一行だけで、週に何日なのかも、どんな条件なら在宅で働けるのかも見当たりません。
「リモート可」「在宅勤務あり」は転職活動中に何度も目にする言葉ですが、法律上の決まった意味はなく、会社ごとに使い方が違います。この一文から働き方は読めません。
求人票を作る側にいた頃、求人に載せていたのは応募してもらうための情報で、リモート勤務ができることもその一つとして書いていました。転職する側の目に入るのはこちらです。
それとは別に、会社が求職者へ示さなければならない情報があります。「就業の場所の変更の範囲」で、2024年4月から募集時などに明示する労働条件に加わりました。
求人広告のスペースの都合で最初から全部は載せられないこともありますが、それでも面接などで最初に接触する時点までには示すのが原則です。
「リモート可」の一文だけを見ていたなら、見る場所を変えたほうがいいと私は思います。この記事ではこの二つの違いを押さえたうえで、在宅で働きたい人が求人票のどこを読めばいいのかを見ていきます。
求人票に「在宅勤務」と書くのに、回数の下限はありません
ハローワークで「システム部事務職/一部在宅勤務」という求人を開いて仕事内容を読んでいくと、在宅について書かれていたのは「月に0〜数回の在宅勤務がございます。」という一行だけです。
2026年9月12日に実際に公開されていた東京の求人で、会社名は伏せます。「一部在宅勤務」とあっても、月によっては0回。そういう求人が実際に出ているんです。
ほかの地域も見ました。広島の保険営業は「直行直帰、リモートワーク可能です。」で、これは家で働く話じゃなくて、外回りの働き方のことです。
- 北海道のケアマネジャー:「習得状況により、テレワークも可能です◎」とあり、最初からできるとは書かれていません。
- 茨城の会計事務:「*一部テレワークも可能です。」で、これだけでは回数が分かりません。
- 埼玉の設計職:「テレワークの対応も可能なのでお気軽にご相談ください。」と、相談が必要な書き方です。
同じ「リモートワーク可能」「テレワーク可能」でも、中身はこれだけばらけています。頻度が書いてあるもの、条件付きのもの、そもそも自宅で働く話ではないものまでありました。
求人サイトで「在宅」に絞り込んでも、正直、言葉だけでは働き方まで決められないので、応募前に知りたいのは実際にどの程度使えて、どんな条件が付くのかになります。
ハローワークの求人を108万件ぶん数えました
ハローワークインターネットサービスの求人検索を、条件を何も付けずに開きます。2026年9月12日時点で、全国の一般求人は1,082,347件ありました。フルタイムとパートの両方を含めた件数です。
そこから「在宅勤務」「テレワーク」「リモートワーク」のどれかを含む求人を探すと、該当したのは9,869件で、全体の0.91%でした。
この9,869件をそのまま「在宅で働ける求人」と数えることはできません。言葉が仕事内容の欄に出てきた求人に限ると5,205件で、残りのおよそ半分は福利厚生や特記事項などに言葉があるだけです。
在宅勤務の制度があっても、募集している仕事で実際に使えるとは限りません。
この5,205件を新着順に並べ、先頭から54件を読みました。すると47件が、2種類の決まった文面のどちらかに当たりました。職種名だけを変えた、受託・派遣系の同じ内容の求人が大量に含まれていたんです。
この2種類の文面を検索から除くと、5,205件は3,484件まで減りました。全国の一般求人1,082,347件に対して0.32%。約311件に1件です。
ただ、この数字をそのまま信じてもらうのも困るので、限界を書いておきます。
- 検索で見ているのは言葉の有無だけで、「テレワーク不可」のような否定まで区別して数える仕組みではないこと
- 読んだ54件は新着順の先頭で、無作為には選んでいないこと
- 47件だったからといって「87%が同じ文面」と全求人に当てはめることはできないこと
- 対象はハローワークの求人だけで、転職サイトや転職エージェントが扱う求人は入っていません
それでも、検索結果の件数だけを見て在宅で働ける求人が多いと言うのは難しい、というところまでは言えます。約311件に1件という数字は、そのくらいの重さで受け取ってください。
2024年4月から、就業場所は「変更の範囲」とセットで示すことになりました
採用側で求人票を作るとき、就業場所を書く欄はひとつではなく、上に「雇入れ直後」と書き、その下が「変更の範囲」です。この書き方になったのは、2024年4月1日に施行された改正職業安定法施行規則によるものです。
募集や求人の申込みのときに示す労働条件として、「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期契約を更新する場合の基準」の3つが追加されました。
厚生労働省のリーフレットの記載例は「就業場所 (雇入れ直後)東京本社 (変更の範囲)●●支社」です。この「変更の範囲」は、入社した日の勤務地だけを指すものではありません。
厚生労働省は、将来の配置転換などの見込みも含めるとしています。締結する労働契約の期間中に、どこまで変更される可能性があるかを示すものです。
根拠になるのは職業安定法5条の3と、同法施行規則4条の2第3項です。同項3号には「就業の場所に関する事項(就業の場所の変更の範囲を含む。)」と定められています。
採用が決まり、労働契約を結ぶときにも同じ内容の明示が必要です。根拠は労働基準法施行規則5条1項1号の3です。同条2項には「使用者は、明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない」とあります。
「リモート可」「在宅勤務あり」は会社が選んで使っている言葉で、「就業の場所の変更の範囲」は法律で示すことになっている労働条件です。同じ求人票の中でも重さが違うんです。
在宅で働ける求人を探すなら、「リモート可」の一文で終わらせず、その求人の「就業場所」と「変更の範囲」まで見てください。入社直後にどこで働くのか、その後どこまで勤務地が変わり得るのかは、こちらに書かれます。
求人票のほかの欄をどう読むかは求人票の読み方にまとめています。
法律で会社に情報を出させられる場面は在宅以外にもあり、既卒やフリーターの応募については既卒とフリーターには、会社に離職率を出させる権利がありますで扱っています。
「会社の定める場所」と書く会社に、悪気はありません
人事が求人票の「変更の範囲」を埋めるとき、どこまで書くかで手が止まります。狭く書けば分かりやすくなりますが、その後に人事異動やオフィスの移転があるたび、社員ひとりひとりと条件を結び直すことになります。
会社側が、将来の変更にも対応できるように広めの言葉を選ぶのはそのためです。
実際の求人を見ると、書き方は大きく二つに分かれます。「変更なし」とする求人と、「会社の定める業務」「会社内のすべての業務」のように範囲を広く取る求人です。
上で触れたとおり、この欄には入社直後だけでなく、将来の配置転換などの見込みまで含めて書きます。会社側からすると、あとで変更する可能性があるものまで最初から狭く限定するのは難しいのです。
「変更の範囲」が広いからといって、将来リモート勤務をやめて出社に戻すつもりだ、とは判断できません。この欄だけでは、実際にどの程度リモート勤務が使われているかまでは分からないからです。
知りたいのは今の運用のほうです。いまリモートで働いている人が何人いて、週に何日使っているのか。欄の言葉が広いか狭いかより、そこを聞いたほうが具体的です。
逆に「変更なし」と書いてある求人なら、その一文には意味があります。「変更の範囲」が広いだけで候補から外す必要はなく、今の働き方とは分けて見ましょう。
書き方そのものから会社を見分ける話はブラック企業は求人票のどこで分かるかで扱っています。
その条件は、面接までに示されていなければなりません
面接の最後に「何か質問はありますか」と聞かれます。在宅勤務の頻度を聞くか迷い、働く気がないと思われたくなくて、そのまま聞かずに終える人もいます。もったいないです。
労働条件は会社側がいつまでも伏せておけるものではありません。厚生労働省のリーフレットでは、求人広告のスペースが足りないなどやむを得ない場合も想定していて、その場合は「詳細は面談時にお伝えします」と付けて、一部を後から示すことも認めています。
それでも原則は変わりません。面接などで求職者と最初に接触する時点までに、すべての労働条件を明示する必要があります。
選考中に条件が変わることもありますが、当初示していた労働条件を変更するなら、その内容を速やかに明示しなければなりません。
試用期間だけ条件が違う場合は、それも分けて示します。
職業安定法施行規則4条の2第6項では、試用期間中とその後で労働条件が異なる場合、それぞれの条件を明示することになっています。「最初の3か月は出社」という条件があるなら、それも別に示す対象です。
求人情報そのものにも決まりがあります。職業安定法5条の4では、求人情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁止しています。正確かつ最新の内容に保つことも求められています。
なので、在宅勤務の条件を面接で確認するのは、求人票にない特別な待遇を求める話じゃないんです。本来その時点までに示されているはずの条件を確かめているだけ。
週に何日使っているのか、試用期間中も使えるのかが求人票から読めなければ、面接で聞いていいです。
面接の場で会社側の情報をどう拾うかは面接で会社を見るに書いています。
制度があることと、あなたが使えることは別です
面接で「テレワーク制度はありますか」と聞いて「あります」と返ってくれば、制度があることは確認できます。けれども、同じ部署で実際に使っている人が何人いるのか、その人たちが週に何日使っているのかは、この返事だけでは分かりません。
総務省の令和7年通信利用動向調査では、テレワークを導入している企業は50.1%で、前年の47.3%から2.8ポイント増えました。対象は常用雇用者100人以上の6,040企業なので、100人未満の会社はこの中に入っていません。
制度があっても使われ方は別です。実際にテレワークを使っている従業者が5%未満の企業が40.2%、80%以上が使っている企業は10.0%。導入している会社の4割で、使っている人がほとんどいないことになります。
働く人の側から見ても同じです。
国土交通省の令和7年度テレワーク人口実態調査では、2025年10月から11月に雇用型就業者36,391人を調べていて、勤務先にテレワーク制度等が導入されている人は34.1%、そのうち実際にテレワークをしたことがある人は64.8%でした。
同じ調査の雇用型テレワーカー25.2%は「これまでに一度でもテレワークをしたことがある人」の数字で、いま在宅で働いている人の割合ではありません。直近1年間の実施率だと16.8%です。
面接で「制度はありますか」と聞くだけでは、実態まで分かりません。「同じ部署で何人が週に何日使っていますか」と聞くと、自分が入社した後の働き方を判断しやすくなるでしょう。
中途入社の直後に出社が多いのは、会社の気分ではありません
中途で入社して最初の数か月はほぼ毎日出社しているのに、周りの社員は週に2日しか来ていない。入社前に聞いていた働き方と違う、と感じてちょっとモヤモヤする場面です。
入社直後だけ出社を増やすことには、理由があります。
厚生労働省のテレワークガイドラインでは、新入社員、中途採用の社員、異動直後の社員について触れていて、業務を円滑に進めるため、コミュニケーションの円滑化に特段の配慮をすることが望ましいとしています。
中途入社の人だけ出社が多いのは、その会社の思いつきというより国の指針に沿った対応でもあります。会社によって違うのは、いつから周りと同じ頻度になるのか。入社前に確認するならこちらです。
そもそも、テレワークのしやすさは仕事によってかなり違います。
国土交通省の令和7年度テレワーク人口実態調査では、雇用型テレワーカーの割合は情報通信業74.1%、学術研究・専門技術サービス業54.0%に対して、宿泊業・飲食業6.0%、医療・福祉6.4%でした。
地域でも差があって、首都圏37.7%、近畿圏25.0%、中京圏22.8%、地方都市圏17.2%です。
「リモート可」とあっても、最初はどのくらい出社するのか、いつから同じ部署の社員と同じ頻度になるのか、入社直後とその後を分けて聞いたほうが実態に近づきます。
通信費と人事評価は、入ってから効いてきます
在宅で働き始めて2か月目、自宅の電気代と通信費の請求を見ても、会社からは何も支給されていません。就業規則を開いてみても、費用を誰が負担するのか書かれていない。
労働基準法89条5号では、食費や作業用品などを労働者に負担させる定めをする場合について規定しています。その場合は就業規則への記載が必要です。
厚生労働省のテレワークガイドラインも同じ条文を挙げ、情報通信機器や作業用品などを労働者に負担させる場合は、就業規則に規定する必要があるとしています。
通信費や電気料金についても記載があり、在宅勤務によって費用が増える場合は、業務に使った実費を合理的・客観的に計算して支給する方法も考えられるとされています。会社がどう扱っているかは、入社前に就業規則で見ておけます。
もう一つは人事評価です。同じガイドラインは、テレワークをせずオフィスに出勤していることだけを理由に高く評価することや、時間外や休日に届いたメールに対応しなかったことを理由に不利益な評価をすることを、適切ではないとしています。
雇用形態についての記載もあります。正規か非正規かという違いだけを理由に、テレワークの対象から外さないよう留意する必要があるとしています。
雇用形態ごとの働き方の違いは派遣という働き方でも整理しています。
「リモート可」を確認して終わりにすると、ここは入社後に請求書を見て気づくことになります。通信費や電気代の扱いと、テレワーク中の人事評価のやり方は、選考中の確認事項に入れておきましょう。
面接で聞くことを、ひとつだけ決めておく
面接の終わりに残った質問の時間は短く、用意してきた5つを全部は聞けそうにありません。その場でどれを残すか決めることになります。
在宅勤務についてひとつだけ聞くなら、「同じ部署でいま何人が、週に何日、在宅で働いていますか」です。制度があるかどうかじゃなくて、実際の人数と頻度を聞きます。
前の節で見たように、テレワーク制度がある会社でも実際に使っている人が多いとは限りません。この聞き方なら、自分が配属される部署の現在の働き方を確認できます。
もうひとつ聞けるなら、「就業場所の変更の範囲は、どう書かれていますか」と確認します。これは会社に追加の条件を求める質問ではありません。本来、面接までに示されているはずの項目です。
三つ目まで聞けるなら、通信費や電気代の扱いが就業規則のどこに書かれているかです。疑ってかかる質問というより、入ってから「聞いていた話と違う」を減らすための確認です。
求人票と面接だけでは人数まで出てこないこともあるので、求人を扱っている側に確認してもらったほうが早いこともあるでしょう。
時間が短ければ、残すのは人数と頻度の一つです。「制度はありますか」ではなく「同じ部署でいま何人が、週に何日、在宅で働いていますか」。この一問で、「リモート可」の一文より確かなものが手元に残ります。
この記事で使った資料
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の3・第5条の4 — e-Gov法令検索(令和6年4月1日施行版・2026-09-12取得)
- 職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)第4条の2 — e-Gov法令検索(2026-09-12取得)
- 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第5条 — e-Gov法令検索(2026-09-12取得)
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条 — e-Gov法令検索(2026-09-12取得)
- 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」(募集時等の明示事項リーフレット) — 厚生労働省(2026-09-12取得)
- 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(令和3年3月25日改定) — 厚生労働省(2026-09-12取得)
- 総務省「令和7年通信利用動向調査」企業編(令和8年5月29日公表・調査時点は令和7年8月末。対象は常用雇用者100人以上の6,040企業) — 総務省(2026-09-12取得)
- 国土交通省「令和7年度テレワーク人口実態調査」(令和8年3月24日公表・調査期間2025年10月〜11月・雇用型就業者36,391人) — 国土交通省(2026-09-12取得)
- ハローワークインターネットサービス 求人情報検索 — hellowork.mhlw.go.jp(2026-09-12に当サイトで集計。件数・内訳はすべて同日時点の検索結果)