派遣で働こうかどうか、考えているところだと思います。検索すると「おすすめ派遣会社10選」がいくつも出てきて、順位はどれも微妙に違う。

この記事は、公開されている数字と法律の仕組み、それと派遣スタッフを受け入れる側の人事として見ていたことで書きます。

最初に、いちばん知られていない事実をひとつ。

派遣会社が時給の裏でいくら取っているか(マージン率)は、法律で公開が義務づけられていて、誰でも見られます

根拠は労働者派遣法第23条第5項。各社が公開しているマージン率のPDFに、この条文に基づく公開だと明記されています。

「派遣は搾取される」という話も「派遣会社は必要経費を負担している」という話も、どちらもよく見かけます。この記事では、どちらの立場も取らずに、実際の数字を出典つきで並べます。判断はそのあとで。

数字の出どころは主に3つです。厚生労働省の「人材サービス総合サイト」、厚労省と東京都の公式資料、各社が自社サイトで公開しているPDF。全部、登録なしで誰でも見られます。

時給の裏側。マージン率の実数

マージン率とは何か

派遣先の会社は、あなたの時給より高い金額を派遣会社に払っています。その差額の割合がマージン率です。

マンパワーグループの公開ページには、派遣料金の平均額から賃金の平均額を引き、それを派遣料金の平均額で割ったものと定義が書かれています。

大手2社の実数

パーソルテンプスタッフはオフィス別に公開しています。2024年度実績、1日8時間あたりの数字です。

オフィス 派遣料金の平均 派遣スタッフの賃金の平均 マージン率
丸の内 21,016円 15,000円 28.6%
品川 21,208円 15,288円 27.9%
横浜 20,736円 14,152円 31.8%
名古屋 18,376円 12,712円 30.8%
梅田 19,032円 13,128円 31.0%
函館 14,928円 10,240円 31.4%

マンパワーグループの札幌オフィスは、2025年度でマージン率30.0%。派遣料金の平均17,410円に対して賃金の平均12,186円です。

この表から言えることが2つあります。

同じ会社でもオフィスによってマージン率は違う。パーソルテンプスタッフの中だけで27.9%から31.8%まで、約4ポイントの幅があります。

そして地域差は、率よりも時給そのものに出る。函館の賃金平均10,240円(1日8時間なので時給約1,280円)と品川の15,288円(時給約1,911円)。1日で5,000円違います。

中小も含めると、幅はもっと大きい

厚労省の「人材サービス総合サイト」では、中小の派遣会社のマージン率も検索結果にそのまま表示されます。東京都で検索して実際に表示されていた例です(確認 2026-08-12、データは令和8年8月1日現在)。

事業所 派遣料金の平均 賃金の平均 マージン率
株式会社東洋実業 東京支店 18,077円 13,859円 23.3%
株式会社BECK 東京営業所 33,000円 23,000円 30.3%
大和システムサービス株式会社 東京事業部 19,876円 12,561円 36.8%
株式会社アイエンジニアリングスタッフ 東京支店 38,832円 23,056円 40.6%
株式会社GSI 東京 32,960円 18,425円 44.1%

23.3%から44.1%まで。念のため書いておくと、これは検索して見えた実例であって、全社の平均でも分布でもありません。ただ、40%を超える会社が実在することは事実として言えます。

この表でいちばん見てほしいのは、BECKとGSIの比較です。

  • 派遣料金はほぼ同じ(33,000円と32,960円)
  • なのに、働く人が受け取る賃金は1日あたり4,575円違う
  • 年間240日働いたとして約110万円の差になる

派遣先が払っている金額が同じでも、どの派遣会社を経由するかで手取りが変わるということです。

ただし、マージン率が低い=良い会社、ではありません

ここは公平に書きます。パーソルテンプスタッフの公式説明によると、マージンからは次の費用が出ています。

マージン率が低すぎる会社は、その分どこかが薄い可能性もある。

それでも、同じ仕事・同じ地域で他社より著しく高い会社があったら、それは自分の時給が削られているサインにはなります。そして中には、この欄を0円・0.0%のまま登録している会社もありました。数字が悪い会社より、数字を出していない会社のほうを私は気にします。ここは私の見方です。

登録する前に3分でできる確認

マージン率も許可番号も、厚労省の「人材サービス総合サイト」で確認できます。実際に操作した手順です。

  1. https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp/ を開く
  2. 「労働者派遣事業検索」をクリック
  3. 都道府県を選ぶ(選ばないとエラーになります)
  4. 事業主名称に会社名を入れる

ひとつ注意があって、社名は正式名称と完全に一致しないとヒットしません。「テンプスタッフ」では0件、「パーソルテンプスタッフ株式会社」で出ました(実測 2026-08-12)。株式会社の位置や全角半角まで合わせてください。ヒットしないからといって無許可とは限りません。

検索結果には、許可番号、派遣料金と賃金の平均、マージン率、労使協定の締結の有無まで表示されます。

主要どころの許可番号は、この記事のために17社分をこのサイトで直接引いて確認しました。一部だけ載せます(確認 2026-08-12、令和8年8月1日現在)。

会社 労働者派遣事業の許可番号
パーソルテンプスタッフ株式会社 派13-010026
株式会社スタッフサービス 派13-011061
アデコ株式会社 派13-010531
ランスタッド株式会社 派13-010538
株式会社パソナ 派13-304674
株式会社リクルートスタッフィング 派13-010563
マンパワーグループ株式会社 派13-315642

無許可の会社から派遣を受け入れること自体が違法で、その場合は後述する「労働契約申込みみなし制度」の対象になります。登録前にここを引くだけで、少なくとも入口の確認はできます。

一般派遣と紹介予定派遣。直接雇用への道があるかないか

派遣には、最初から「派遣先での直接雇用」を前提にした紹介予定派遣という仕組みがあります。普通の派遣と混ぜて考えると迷うので、違いを先に。

紹介予定派遣は、派遣期間が6か月を超えてはいけないと決まっています。6か月以内に、直接雇用に進むかどうかが決まる設計です。

もうひとつ、知られていない権利があります。紹介予定派遣で派遣先があなたを雇用しなかった場合、その理由を、求めれば原則として書面で示してもらえます(出典: 同ページ)。断られて終わり、ではない。理由を文書で要求できます。

逆に、通常の派遣では、派遣先が働く人を面接で選んだり指名したりすること(特定目的行為)は禁止されています。

「顔合わせ」という名前の実質的な面接が行われている、という話は昔からありますが、制度上の建前はこうなっています。事前の面接や履歴書の送付が認められるのは紹介予定派遣の場合です。

正社員になることを目的に派遣を考えているなら、次の2つのルートは設計がまったく違います。ここを分けて求人を見てください。

  • 一般派遣で3年働いて直接雇用を待つルート
  • 最初から紹介予定派遣で入るルート

3年ルール。いちばん誤解されている落とし穴から

同じ職場の同じ組織単位(課やグループ)で派遣として働けるのは3年まで。これはだいたい知られています。

知られていないのは、こっちです。

事業所単位の3年のカウントは、あなたが働き始めた日から始まるのではありません。その事業所が最初に派遣を受け入れた日が起算日で、途中で派遣スタッフが交替しても起算日は変わりません。

  • 出典: 東京都産業労働局『派遣労働ハンドブック』第4章 p.42-43 (確認 2026-08-12)

つまり、あなたが入った時点で、その職場の3年カウンターはすでに2年半進んでいるかもしれない。「3年働けるはず」と思って入ったら半年で期限が来た、ということが制度上ありえます。

これを防ぐ手段も用意されています。期限に達する日(抵触日といいます)は、派遣会社があなたに明示しなければならないと法律で決まっています(労働者派遣法第34条。出典: 同ハンドブック p.42)。

契約書に書いていなければ、聞いていい。教えてもらえたらラッキーな情報ではなく、明示が義務の情報です。

3年経ったら何が起きるか

同じ組織単位で3年働く見込みになった人に対して、派遣会社は次の4つのどれかをやる義務があります。

  1. 派遣先に直接雇用を依頼する
  2. 新しい派遣先を提供する(合理的な条件のもの)
  3. 派遣会社自身が派遣以外の形で無期雇用する
  4. その他の雇用安定の措置(紹介予定派遣の対象にする等)

1をやって直接雇用に至らなかった場合は、2〜4のどれかを追加でやる義務まであります。

ただし、ここに大きな落とし穴があります。この措置は、黙っていると発動しません

対象になるには「派遣終了後も継続して働きたい」と派遣会社に伝えることが必要だと、同じリーフレットに明記されています。しかも、4つのうちどれを希望するか指定できる。「新しい派遣先じゃなくて、今の会社への直接雇用の依頼をしてほしい」と言っていいわけです。

もうひとつ、派遣先の側にも義務があります。同じ事業所で1年以上働いている派遣スタッフには、派遣先はその事業所の正社員募集の情報を知らせなければなりません(労働者派遣法第40条の5第1項。出典: 同ハンドブック p.47)。

お願いベースではなく周知義務です。1年以上働いていて正社員の口を探しているなら、「社内の正社員募集があれば教えてください」と言う根拠がここにあります。

「2年11か月で終了」と「3か月空けてまた来て」

3年ルールの周辺には、制度の隙間を突くような運用の話がついて回ります。これも一次資料に答えがありました。

雇用安定措置の義務を逃れるために、わざと派遣期間を3年未満にすることは、義務違反と同視される脱法的な運用だと指針に書かれています。繰り返し指導しても直らない場合は許可の更新が認められません(出典: 同ハンドブック p.47)。

2年11か月での契約終了を繰り返す会社は、労働局に相談する根拠があるということです。

派遣終了から3か月を超えて空けると、それまでの期間が通算されなくなる仕組み(クーリング期間)もあります。ただし、本人が希望しないのに3か月空けて同じ職場に再派遣することは、指針上「望ましくない」とされています(出典: 同ハンドブック p.44)。

「3か月休んでからまた来て」と言われたら、それは断ってよい提案です。

無期雇用派遣なら3年ルールはかからない

派遣会社と無期雇用契約を結んでいる人と60歳以上の人などは、そもそも期間制限の対象外です(出典: 厚労省リーフレット p.1)。「無期雇用派遣なら3年で切られない」は制度上正しい。ただし期間制限がないことと雇用が保証されることは別の話なので、そこは分けて考えてください。

派遣以外の選択肢も並べて考えるなら、4問で候補になる会社が2〜3社出ます。

受け入れ側から見た派遣

ここからは公的データではなく、採用側の人事として派遣スタッフを受け入れてきた側の話です。派遣会社の内部は知らないので、あくまで受け入れ側から見えていた範囲の話として読んでください。

制度の条文には出てこない部分、たとえば直接雇用の話が社内でどう始まるのか、派遣元の会社によって何か違いがあるのか。そこを書きます。

細かいけれど、知らないと損をする4つ

最後に、調べていて「これは知られていないだろう」と思ったものを4つ。すべて出典は上で挙げた厚労省リーフレットと東京都ハンドブックです。

元の職場に派遣で戻ることは1年間できない

会社を辞めて、元の職場に派遣で戻ることは1年間できません(60歳以上の定年退職者は例外)。派遣会社側も元勤務先へ派遣してはいけないし、元勤務先も受け入れてはいけない決まりです。

「正社員を辞めて、気楽な派遣で同じ職場に」というプランは、1年間は成立しません。

単発・日雇いの派遣は原則禁止

単発・日雇いの派遣は原則禁止で、例外に当たる人しか働けません。例外は次のとおりです。

  • 60歳以上
  • 昼間学生
  • 本業の年収500万円以上の副業
  • 世帯年収500万円以上で主たる生計者でない人
  • 特定の専門業務

「単発バイト」と書かれた募集が派遣なのか直接雇用のアルバイトなのかで、働ける条件が全然違います。

違法派遣なら直接雇用を申し込まれたとみなされる

違法な派遣に当たった場合、派遣先があなたに直接雇用を申し込んだとみなされる制度があります(労働契約申込みみなし制度)。対象は次の4つで、違法派遣が終わった日から1年間有効です。

  • 無許可業者からの派遣
  • 禁止業務
  • 期間制限違反
  • 偽装請負

該当するかどうかは都道府県労働局に助言を求められます。

6か月以内に何人辞めたかも公開されている

派遣会社が職業紹介事業も一緒にやっている場合、紹介で就職した人が6か月以内に何人辞めたかの公開義務があります(職業安定法第32条の16第3項)。

紹介予定派遣を考えている人は、その会社の紹介実績と離職者数の欄を人材サービス総合サイトで見ておく価値があります。

困ったときの相談先

都道府県労働局の需給調整事業課です。

  • 東京: 03-3452-1472
  • 大阪: 06-4790-6303
  • 全47都道府県分の一覧: 厚生労働省リーフレット p.4(出典: 同リーフレット)

まとめ:登録前にやることは3つだけ

  • 人材サービス総合サイトで社名を引く。許可番号と、マージン率と、労使協定の有無が出ます。マージン率の実勢は今回確認できた範囲で23.3%〜44.1%(実例であり平均ではありません)。数字を出していない会社は、私はそれ自体をシグナルとして見ます。
  • 直接雇用が目的なら、一般派遣と紹介予定派遣のどちらのルートかを先に決める。紹介予定派遣は6か月以内に決まる設計で、断られたら理由を書面で求められます。
  • 契約前に抵触日を確認する。3年のカウントはあなたの入社日からとは限りません。そして3年が見えてきたら、続けたい意思を派遣会社に伝える。黙っていると雇用安定措置は発動しません。

この記事には口コミを載せていません。今回、出典つきで引用できる口コミが集められなかったからです。集まったら追記します。どの派遣会社が良いかの断定もしていません。それを判断する公的データが、マージン率と許可番号のほかにはほとんど存在しないからです。