「未経験歓迎って書いてあるのに落ちました。あれは嘘なんですか」。

エージェント時代、何度も受けた質問です。落ちた直後の人にこれを聞かれるたび、説明の難しさに毎回ちょっと苦しかった。

嘘ではないんです。

ただ、「未経験」という言葉が指す範囲が読む側と書く側でズレている。求人を出す側もやった人間としてこのズレを最初にほどきますが、ここが分かると応募していい求人と時間の無駄になる求人の区別がつくようになるはずです。

「未経験」は3種類ある。求人が歓迎しているのはどれか

社内で「未経験可」の求人を作るとき、頭の中では必ずどれかを想定しています。

採用側が想定している「未経験」の3段階

1 業界未経験 職種は同じで業界が違う。営業→別業界の営業。実は経験者採用に近い 2 職種未経験 業界は近いが職種が違う。販売→同業界の企画など。育成前提 3 完全未経験 業界も職種も初めて。若さか、大量採用の枠であることが多い

「未経験歓迎」の求人の多くは、上の2つを想定しています。

営業経験者が業界を変えて応募してくる。これが採用側にとっての理想の「未経験」です。仕事の型はできていて商材知識だけ教えればいいので、求人票の文面は同じ「未経験歓迎」でも中身はほぼ経験者採用なんですよね。

で、完全未経験を本当に歓迎している求人も、あります。

あるんですが。

そこにはたいてい理由があります。人が集まらない、離職が多い、大量に採る。歓迎の熱量が高い求人ほど、なぜ歓迎なのかを一度疑ったほうがいい。この読み方は求人票の読み方の記事でも書きました。

どの未経験なら通るか。判断していた側の基準

書類を落とす側として、未経験応募をどう見ていたか。見ていたのは「未経験の距離」です。今の仕事と応募職種の間に重なりがどれだけあるか。業界か職種か、どちらかが地続きなら検討する。両方飛ぶ応募は20代のポテンシャル枠でないと正直厳しかったです。

もうひとつ、距離を縮める札があります。

自習の痕跡。

完全未経験でも、その分野をすでに独学で触っている人は別枠で見ていました。資格でなくていいんです。作ったもの、続けている勉強、なんなら読んだ本の消化度でもよくて、「入ってから教わる気の人」と「もう始めている人」の差は書類の紙の上でも驚くほどはっきり出ます。未経験からIT業界を目指す場合は、未経験者の支援を専門にしている窓口があります。「もう始めている人」になるための学習の順番から相談できます。

未経験転職の選考は経験の勝負ではなく準備の勝負。ここだけは覚えて帰ってください。

未経験転職とエージェントの相性

中の人として、耳の痛い話もしておきます。

完全未経験の転職希望は、エージェントにとって決めにくい案件です。紹介できる求人が少ないから。断られる仕組みの記事で書いた通り、面談を断られたり放置気味になったりしやすい。あなたの価値の問題ではなく商売の構造の問題です。

で、逆のパターンもあって。

こっちのほうが要注意。

未経験可の大量採用求人ばかりどさっと紹介してくる担当者がいます。決まりやすい求人に流し込む型で、私のいた会社にもいました。歓迎される理由が「人が定着しないから」の求人が混ざっている束を、疑いなく受け取らないでほしい。1社ずつ「なぜ未経験歓迎なのか」を担当者に聞く。まともな担当なら答えられます。

歓迎される未経験かどうかは、教育体制の書きぶりに出ます。その欄を含めて応募前に見る項目を求人票チェックリストに並べています。

現実的な戦い方

まとめると、未経験転職の設計はこうなります。

未経験転職・通らない動き方と通る動き方

通らない動き方 業界も職種も一気に変えようとす 「未経験歓迎」の文字だけで応募する やる気を志望動機の中心に据える 通る動き方 業界か職種、どちらかは地続きにする なぜ未経験歓迎なのかを求人ごとに読む 始めている自習の痕跡を具体で示

両方変えたい人は、二段構えを検討してください。

まず職種を変えて、数年後に業界を変える。

遠回りに見えるかもしれませんが、面談で見送ってきた大量の「全部一気に変えたい」応募と、数年がかりで着実に渡り切った人たちの両方を見てきた身としては、たぶんこれが一番成功率の高い経路です。

やりたいことが曖昧なまま「とにかく今と違う何か」を探している状態なら、応募の前に消去法の自己分析を先にやるほうが早いです。

スキルがないから無理、ではありません。

距離の測り方と準備を知らないまま突っ込むから落ちる。それだけの話だと私は思っています。